「ミステリと言う勿れ」毎週欠かさず見たくなる訳 普通のミステリーとも刑事ものともちょっと違う

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事件のあらまし(推理)は整が長セリフで説明してくれるのでポイントはつかみやすい。状況説明と整なりの持論をとうとうと語ることがうっとおしいとか気持ち悪いとか思う人もいるようだが、そこは菅田将暉がほどよく人間味があってとっつきやすく演じて緩和している。

社会をちくりと皮肉るものが好きな視聴者も一定数いて満足できるものにもなっている。美術や照明など画が凝っていて、クラシックの劇伴がここぞというところを盛り上げる。取り調べ室での会話劇の緊張感から猟奇的な犯罪のスケッチまで刑事もののあらゆる要素が満載。刑事ものあるあるの指摘――「真実はひとつなんてそんなドラマでしか言わないセリフをほんとうに言う人がいるなんて」「真実はひとの数だけあるんですよ」「でも事実はひとつです」(第1話より)もある。

それこそいろんな視点でミステリ(刑事もの)を楽しめる工夫が凝らされている。じつによくできた話なのである。チーフ演出家の松山博昭は編集に定評のある人物なのでドラマチックにカットを重ねて盛り上げて見せる。

余裕を持った制作環境も奏功

こういうドラマを作ることができた理由は作り手の志はもちろんのこと、制作環境も大きいだろう。主演の菅田将暉のスケジュールの兼ね合いとコロナ禍が重なって撮影は1年ほど前に済んでいた。すでに撮影が終了しているからこそ第1話でふたつのエピソードを放送することも可能であるし、これから整が出会う犯人たちの映像もあらかじめ流すことができたわけだ。

通常の連ドラのスケジュールだと放送直前まで撮っているようなことも少なくなく、次回予告の素材すら足りないことがあるくらいだ。その分、視聴者の反響で内容が変更することもあるとはいえ、後半どうしても粗が目立ってくる。『ミステリ』は原作があってその行き着く先が見えている。その安心感はクオリティーの高さにも繋がっている。

しかもコロナの感染対策で撮影がしづらい今、俳優の芝居のうまさにかけるしかないところもある。場数を踏んだベテランや才能ある若手の会話劇で説得力あるものにするしかなく、『ミステリ』はそれに足る内容でもあった。期せずしてかしてないのか定かではないが、『ミステリと言う勿れ』がとにかくちゃんと続けて見ることに意義のあるドラマになったことは喜ばしい。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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