長谷工コーポレーションの勝算、東急綱島駅近辺で“ドミナント施工”に挑む
9月中旬現在、第三施工統括部が工事中の物件は、平塚など湘南エリアなどを含めて全部で27。最盛期に比べたら少ないというが、ゼネコン業界ではこの件数が傑出しているのは間違いない。ちなみに同社は、一般ビル建築には手を出さず、ひたすら大都市圏でのマンションにこだわり、これを専業として今11年3月期も2900億円を目標にコツコツと受注を積み上げている。
マンション専業の長谷工は、住宅エリアで工事を繰り返す事業特性があるため、周辺住民からの理解と協力を得るという難題とつねに向き合ってきた。同社は、この点に神経をとがらせて、スムーズな現場施工の進捗に取り組んでいる。
具体的には、建設部門全体で、現場施工の品質改善運動を展開するグレードアップキャンペーンはその象徴だ。たとえば、綱島エリアを含む第三施工統括部では、足場のメッシュシートはきっちりと張ってあるか、妻壁はきれいか、クロスの仕上がりは入居者に満足を得ることができるか、といった細々した内容のチェックに取り組んでいるという。
現場がなるべくカネを使わずに行える、見栄え向上とイメージアップの両面作戦で、「キャンペーンは最終の第4段階に到達した」と、現場総責任者の村川俊之第三施工統括部長は言う。この地道な作戦が、施工精度を向上させ、入居後のクレーム件数を相当数減らす、という成果に結び付けているのだ。
言い換えると、グレードアップキャンペーンは、究極のコスト削減という重要な役割を担っている。完成後に、買い主が指摘する部屋のキズや汚れといったクレームは、少なければ少ないほど、それらの手直しに必要な経費が削減できる。また、次の施工現場に技術ノウハウを受け継ぐという共有化を図る狙いもある。
さらに、現場の職人がマンション施工で苦労した事案は、改善点として設計部門にフィードバックする仕組みが確立されている。たとえば、継ぎ目が目立たないクロス素材の開発は、自社の研究開発セクションで徹底して見直して実用化し、「施工現場の負担が軽減された」(村川氏)という。