「最強」毒グモの母が迎える最期はどこまでも尊い カバキコマチグモは産んだわが子にその身を捧ぐ

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夏場は特に注意が必要なカバキコマチグモ(写真:kameko/PIXTA)
生き物たちはみな、最期のその時まで命を燃やして生きている──。
土の中から地上に出たものの羽化できなかったセミ、南極のブリザードのなか決死の想いで子に与える餌を求め歩くコウテイペンギンなど、生き物たちの奮闘と哀切を描いた『生き物の死にざま』の姉妹版『文庫 生き物の死にざま はかない命の物語』。同書からカバキコマチグモの章を抜粋してお届けする。
前回:卵泥棒と蔑まれた恐竜は決死で子を守る親だった(2月10日配信)

普通のクモの巣を張らないカバキコマチグモ

日本に毒を持つクモは少ないが、最強の毒を持つのがカバキコマチグモである。

このクモは、体長が2センチ程度と小さいが、その毒は毒ヘビやフグよりも強く、世界の猛毒生物の6番目にランキングされているほどである。

体は小さく、毒も少量なので、幸い日本での死亡例は報告されていないが、海外では嚙まれて死亡した例もあるというから、危険であることに間違いはない。

死亡することは稀(まれ)とはいえ、カバキコマチグモに嚙まれると、激痛が走り、腫(は)れあがる。頭痛や発熱、呼吸困難やショック症状を起こすこともあるという。

カバキコマチグモに嚙まれる事故は、6月から8月頃にかけて多くなる。

この時期は、このクモの産卵期にあたるので、特に注意が必要なのだ。

カバキコマチグモの巣は目立たない。このクモは、ふつうのクモのような「蜘蛛(くも)の巣」を張ることはなく、ススキなどの細長い葉を丸めるように折り曲げて、筒状の巣を作る。そして、巣から出て歩き回っては、獲物となる昆虫を捕らえて食べるのである。

(写真:写遊/PIXTA)

やがて、カバキコマチグモのメスは、卵を育てるために新たな巣を作る。そして、オスと交尾を終えたメスは、葉を丸めた筒状の巣の中に100個程度の卵を産み、巣の中で卵を守るのである。

卵を守っているこの時期は、母グモは警戒心が強く、気も立っているから、草むらに分け入って、不用意に巣を壊してしまうと、母グモに攻撃される危険性が高い。

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