営業は最高の「クリエイティブの学校」である 齋藤太郎×佐渡島庸平のクリエイティブ対談2
ビジネスにもクリエイティブが必要
佐渡島:齋藤さんはなぜこの本を出そうと思ったんですか?
齋藤:クリエイティブの仕事なんてできないと思っていた過去の自分に「お前にもできるよ」と言ってあげたかったんだと思います。
僕は電通時代はただの営業で、クリエイティブの仕事は絶対にできないと思っていました。最近はクリエイターのコモディティー化が進みましたが、昔の電通のクリエイティブディレクターは、社内でも特別な人だったんですよね。少なくともその頃の僕はそう思っていた。持って生まれた才能がある人しかクリエイティブに口を出してはいけないものだと思っていた。でも、自分が物事をきちんと観察すれば、イシューは明確になります。明確になった課題に対してやるべきことをやっていくだけで、いろいろな人から信用されたり頼っていただけることが増えてきた。「表現のクリエイティブ」ではなく「ビジネス(課題解決)のクリエイティブ」であれば、「クリエイティブは特別だ」と思っていた昔の自分にもできるなと思ったんです。
佐渡島:社会全体が成熟していなかったときは、解決すべき課題の共通理解が簡単に得られました。でも今は不便なことがなくなり、「何をどうすると価値になるのか」を決めるのに時代の空気を読まなければいけなくなりました。その中で自分たちのあり方を決める行為自体がクリエイティブな行為であり、そこには第三者の存在が必要なのだと思います。その際、第三者が「不便を基にしていない課題」を見つけるには、営業とクリエイティブの両方を見ていて、それを越境する必要があるように思います。