(第54回)【2011年度新卒採用戦線総括】行きすぎた就職戦線をいかに是正していくか

 1980年代も1990年代も採用戦略の柱は「母集団形成」だった。対象学生の数を確保して、多数の鉱石の中から少ないダイヤの原石を見つけようとしていた。2009年度採用までこの戦略は支配的だった。
 2010年度、2011年度にこの戦略は転機を迎える。プレエントリーの数が大幅に増加して人事の処理能力を超えた。会社説明会への出席希望者の増大に対して、開催回数を増やしたが、それでも足りない。そして「こんなことに追われる採用活動で、会いたい層の学生と会う機会を逃しているのではないか」という疑問が生まれる。

 2011年度ではこれまでの施策が見直され、「会いたい学生に会う」ために採用フローが見直された。「量」は放置しても来るのだから「追う」必要はない。ターゲットだけを追い、囲う戦略への切り替えが始まった。これが「ターゲット採用」である。
 従来型の就職ナビを軸にした採用は「マス」を対象としていたが、ターゲット採用では大学階層別の施策になり、学生との「ダイレクトコミュニケーション」に変わる。Webを介し、文字データによるコミュニケーションではなく、「会話」が重要なのだ。2012年度にはターゲット採用はさらに自覚的になるだろう。

●指定校制度がなくなりオープンエントリー制度が始まった1990年代

 ターゲット採用の詳細については前回に紹介した。ターゲット大学、学部・学科を設定して、学生にアプローチするものだが、似たような方法が以前にもあった。「指定校制度」だ。すでに死語になっているらしく、Web検索しても良い説明が見当たらないので、簡単に説明しておこう。
 「指定校」とは企業の新卒採用において採用する大学を指し、その情報を開示する方法だった。1980年代には普通の制度だったし、あまり問題にされたこともなかったと思う。「指定校」と明示しなくても、「採用実績校」についてのデータ欄があったから、学生は「自分の大学から採用していない」ということはわかった。

 「指定校制度」がなくなり始めたのは1990年代のことで、ソニーが応募用紙に大学名を記載しない「大学名不問採用」を開始した1991年に始まる。このソニーの決断は大きな反響を生み、多くの大手企業が追随して「オープンエントリー制度」として定着した。
 「オープンエントリー制度」とは「全学生に門戸を開く」という意味で、1990年代に大きな矛盾はなかった。就職ナビは1990年代半ばに登場したが、採用メディアの主体は紙であり、エントリーシートは手書きだった。手間がかかるので、志望できる企業数は限られていた。

 現在は、就職ナビのオープン(10月)から就職戦線がスタートする、という常識があるが、1990年代の就職ナビは12月にオープンした。そして企業も学生も紙メディア(リクルートブックといわれた)が就職情報の主体だと考えており、活動は年を越してからだった。
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