アウディの大胆なEV転換に不安と期待が混じる訳 日本で2025年にBEV1万台の目標達成に何が必要か

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「Q4 e-tron」のリアスタイル(写真:アウディ ジャパン)

ディスティネーションチャージャー、要するに出掛けた先での8kWのAC充電器の設置もディーラーとともに進めていく。出力が小さいのでホテル、ゴルフ場などで長時間の充電を行うことが前提となるが、こちらは急速充電器よりはるかに安価になる。こちらについては他社のクルマも使用可能なものを設置していくという。

アウディのBEVシフトはカーボンニュートラル実現のための不可欠の方策だとシェーパース氏は強調する。「日本ではまだBEV化であるべきかという議論が行われていますが、その議論はヨーロッパでは終わっています。すでに、それをどう実現するかにシフトしているのです」と話し、不安であっても行く先を決めて進んでいくことが未来に繋がるのだと力強く話す。

筆者の立場としては、カーボンニュートラルすなわちBEV化ということには賛成ではないし、BEV化は既定の流れだという立場にも与しない。しかしながらインポーターという立場としては、そう言うほかに選択肢が無いだろうし、そのために可能な限りの策を積極的に取っていくという意欲はよく伝わった。

各ディーラーへの急速充電器設置にどれだけ意味があるか

しかし投資額が半端ではないだけに、方策としての各ディーラーへの急速充電器設置に、どれだけ実効的な意味があるのかは、もう少し考えてからでもいいのではないか。まずテスラが始めたようなインフラの抱え込みは、考え方としてもう古い。世に広く行き渡るようにするという考えとは逆行している。そもそも130近い店舗に急速充電器が付いたって、年に1万台売るつもりならば絶対に不足するのは目に見えているのだ。

アウディ ジャパンにだけ言うべき話ではないかもしれないが、むしろ充実させるべきはディスティネーションチャージャーではないだろうか。しかも、急速充電の。

たとえば東京をベースに考えれば、実は伊豆半島の半分から南にはCHAdeMO急速充電器はあるにはあるが、どれも20kWや30kWといった、シェーパース氏の言う「急速ではない」ものしかないのが現状だ。これではたとえば東京からBEVで伊豆に旅行へ行くのはためらわれる。東京から房総半島へのドライブと考えても状況はほぼ一緒である。

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