1日1時間も整頓に費やす会社がぐっと伸びた必然 一倉定が説く「環境整備」の驚くべき効能とは
さて、一倉先生は環境整備をどのように実践させていたのか。冒頭にあった「規律・清潔・整頓・安全・衛生」のうち「清潔」について解説します。
一倉先生による清潔の定義を引用しましょう。
清掃することでもない。
それは、
①いらないものを捨てる
②いるものを捨てない
ということである。
一倉定の社長学第10巻『経営の思いがけないコツ』より
清潔とは、きれいにすることでもなければ清掃することでもない、という否定から始まります。初めて読んだ人は驚いてしまうでしょう。
「清潔にする」ということは、「きれいにすることであったり、清掃することではないの?」と、そのように認識している人も多いと思います。だからこそ、一倉先生は、「勘違いしちゃいけないよ。一倉式環境整備の『清潔』は、きれいにすることを目的にしているんじゃないんだ」と、初めにクギを刺しているわけです。
そのうえで、①いらないものを捨てる、②いるものを捨てない、と「清潔」を定義しているのです。また、このいらないものを捨てて、いるものを捨てないということも、読んだ限りではアタリマエのことじゃないかと思うかもしれません。しかし、このアタリマエのことができないわけです。いらないとわかっていながら捨てられない、いるのに捨ててしまうのです。
捨てられない状態は便秘と同じ
このような状態について、面白いたとえをもとに語った文章が一倉定氏の『経営の思いがけないコツ』に載っています。
そこでは、「捨てられないということは、人体にたとえると便秘の状態だ」というのです。逆にいるものを捨てたら、下痢であると。これは不健康であるということですね。このような状態が続いていけば、人は病気になってしまいます。
さらに、「会社や家庭、公共の場であっても、いらないものを捨てずにおいたら、不潔であり、邪魔であり、腐れば悪臭を放つ。同時に悪い『オーラ』が発射されて、不愉快だけでなく、健康にも悪く、人々をイライラさせる。百害あって一利なしである」と、たたみかけています。
また一倉先生は、一倉定の社長学第1巻『経営戦略』の中で、「社長の決定で最も難しいのは「捨て去る」という決定である」と言っています。その部分を引用してみましょう。
私は、社長の決定のうちで、何が最も大切で、何が最も難しいか、という問いに対して、躊躇(ちゅうちょ)することなく「捨て去る」ことであると答えるのである。
論より証拠、優秀会社は例外なく「捨てる名人」であり、破綻(はたん)した会社は例外なく「切捨音痴」である。
一倉定の社長学第1巻『経営戦略』より
社長の決定の中で最も難しいのは「捨て去る」という決定だと言い切っていますね。さらに、一倉先生のコンサルティングのうちで最も難しく、最も急ぐことこそ「捨て去る」ことを納得させることなのだ、という告白をさらりとしています。多くの赤字会社を救ってきた一倉社長学の神髄の1つがここに披露されています。
赤字会社を救済するためには、社長の間違った考え方を捨てさせる「説得」こそ、瀕死の会社を救済するために最も急がなくてはならないことなのです。環境整備において毎日、捨てることの実践をしていく中で、リーダーとしての捨て名人としての道を歩んでいく必要があるのです。
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