1日1時間も整頓に費やす会社がぐっと伸びた必然 一倉定が説く「環境整備」の驚くべき効能とは

拡大
縮小

最後になりますが、一倉式環境整備について行う「期間」と「時間」について解説したいと思います。環境整備を、「何日続ければいいのか?」「休みを入れていいのか?」「どのくらいの時間やればいいのか?」。

「会社が存続している限り」毎日1時間環境整備を

実はこれについて、一倉式環境整備ははっきりと答えを出しています。まずは、一倉先生の言葉をお読みください。

“必ず正規の勤務時間に、毎日一時間、行う。大切な活動だから、勤務中にやらなければダメだ。時間外にやるのは、“搾取”である。これをやると、社員はたちまち反撥(はんぱつ)してくる。
そして、毎日一時間というのは、「会社が存続している限り行う」ということである。
きれいになったから、三十分に縮める、というようなことをやったら、必ず元の木阿弥(もくあみ)になってしまう。”
一倉定の社長学第10巻『経営の思いがけないコツ』より

ここが、ほかの環境整備や5Sと大きく違うところです。

『一倉定の環境整備 1万社を復活させた経営の神髄』(日本実業出版社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

一倉先生は、どんなコンサルタントよりもさまざまな業種を指導してきた結果、例外なく、勤務時間内に「会社が存続している限り」、毎日1時間行いなさいと言っています。きれいになったからといって30分に縮めてしまっては駄目だとクギを刺しています。

慣れてくると私たちは30分にしがちですよね。きれいだからと言って30分に縮めたら、きれいになれば10分に、さらに1日おきでいいやとエスカレートしていって、最終的に環境整備自体が終了してしまいます。

勤務時間内に環境整備の時間を1時間取らなければなりませんが、考えてみてください。社員に給料を払って1時間、環境整備をさせられますか? 例えば、時給1000円だと、10人社員がいたら、毎日1万円です。そう考えると経営者にとって、勤務時間内の1時間は大変貴重です。さて投資できるでしょうか?

この1時間についての一倉先生の回答です。一倉先生の考え方がよくわかります。

貴重な仕事の時間を、一日の休みもなく、全社をあげての環境整備にさくのである。
知らない人が見たら、「何ともったいないことをしているのだ」「狂気の沙汰だ」と呆(あき)れてしまう。
ある会社では、熱心な税理士が、「貴重な時間を掃除にあてて、年間250時間もムダをしている。年間の人件費に換算すると、1千万円以上になる」と、計算書までそえて社長に提出した。社長は、まったく聞く耳などもっていなかった。その税理士は、怒ってやめてしまったが、社長は、これでセイセイしたというような顔をしていた。一日1時間の環境整備で、社員の仕事ぶりがまったく変わり、お客様の信頼も高まって、売上げが増加したからである。
このように、環境整備を行っている会社では、その威力を知っているので、環境整備の時間ほど貴重な時間はないのである。
一倉定の社長学第10巻『経営の思いがけないコツ』より

社長にとって、一見、狂気の沙汰と思える毎日1時間の環境整備を行えば、社員の仕事ぶりが変わり、お客様の信頼が高まり、売り上げが増加します。

会社にもたらす利益は無限大なのです。

舛田 光洋 環境整備コンサルタント

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ますだ みつひろ / Mitsuhiro Masuda

1969年北海道生まれ。2005年「心と掃除」の研究により自ら開発した実践型思想「そうじ力」で社会啓蒙活動を開始する。『夢をかなえるそうじ力』(総合法令出版)を出版。国内外51冊におよぶ『そうじ力シリーズ』は累計370万部を超える。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT