エバーノート躍進を支える「リアルの感覚」 デジタル狂乱の中で、大事なのは「繊細さ」?

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エバーノートのフィル・リービンCEOが語る「リアルの感覚」とは?(写真:Bloomberg)

「100年続く企業を作りたい」

まるで老舗の和菓子屋のような、こんなことを言っているのは、エバーノートのフィル・リービンCEO(最高経営責任者)である。エバーノートは、インターネットに自分の大切なノートや写真を保存し、どんなデバイスからもアクセスできるようにしたサービス。そこから始まって、現在では共同作業、プレゼンテーション、作業計画などができるツールがそろい、いわばクラウド上の仕事場と言えるような場所になっている。

リービンが「100年企業」にしたい理由は、エバーノートの製品はまるで自分たちのために作ったようなものだからだ。そんな製品を作る企業は、大切に育てたい。そうした思いがあるのだ。

「使うだけで、自分が進歩する」感覚?

エバーノートの製品は、いわゆるライフハッカ−系と言えばわかりやすいだろうか。同じようなことができるソフトウエアはほかにもあるかもしれないが、それが非常に使いやすく、またそれを使うことによって自分の生活や思考が一歩前進するような側面を備えている。ただ済ませるだけならば作業だが、自分の進歩のためにあるのは仕事。そんな仕事ができるツールがそろっているのである。

エバーノートは、会社で行う仕事だけでなく、自宅改築とか、趣味のように自分の楽しみのためにやっているプロジェクトとか、そういったことにも広く使われているようだ。「ビジネスだけではない、自分の人生の仕事用」。リービンは、そう説明する。そんな仕事を楽しく、美しく、そして生産的に行うための場所作りを、彼は目指しているのだ。

「過去50年間を振り返ってみると、テクノロジーは人間の身体を強くしてくれました。車があるおかげで遠くまで速く行くことができるようになり、電話があるおかげで自分の声が向こう側まで届くようになった。けれども、人間の思考の部分に影響を与えたかというと、そうではありません。

古代のわれわれの祖先は、数百のことを知っていて、それはどの実を食べると危険だといったような役に立つことばかりだったでしょう。現代のわれわれが知っていることも、せいぜい同じくらいでしょうけれど、内容はランダムに散らかったまま。その意味では、ひょっとするとわれわれは賢明さを失ったのかもしれない。こうした時代だからこそ、テクノロジーを使って、世界をポジティブな方向に向けるような人間の決断を助けたい」

仕事用のツールに見えて、その目指すところはかなり向こうにまで及んでいるのだ。

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