仕事のできない人は「単純に考える」ができてない 複雑な要素を削ぎ落としてこそ、最適解に近づく
科学者のカール・セーガンは「ほぼすべてのことにおいて、単純で地味な解釈のほうが当てはまる傾向にある」と説きます。「ひまわりが空を横切っていく太陽を追うことでさえ、光屈性と植物ホルモンのことがわかるまでは奇跡にほかならなかった」と述べ、奇跡とされるような現象であっても、その背後にはシンプルなカラクリが働いているものだとしています。
ここで、複雑な解決策がうまく機能せず、反対にシンプルな解決策が効果的だった2つの実例を紹介しましょう。
ただ「ボール」を浮かべる水汚染対策
ロサンゼルスにある約4万平方メートルの広さを誇るアイヴァンホー貯水池は、60万人以上の住民に飲料水を供給する貴重な水源。そこに貯められた6000万ガロン近くの水は、一般的なやり方にしたがい、塩素で消毒されています。一方で、臭化物と呼ばれる化学物質が高濃度で含まれていて、塩素と臭化物が混ざり合って日光に当たると臭素酸塩と呼ばれる危険な発がん性物質が発生します。
ロサンゼルス市水道電力局(DWP)は、水源の臭素酸塩汚染を避けるため、貯水池の表面を覆う手段を必要としていました。しかし、会議でブレインストーミングを重ねた結果、4万平方メートルのシートを池に被せるか、巨大な開閉式ドームを建設して覆うという2つの実行不可能な解決策しか考え出せないでいました。
そんなあるとき、DWPの生物学者が「バードボール」の応用を提案します。バードボールとは、空港で滑走路近くに鳥が集まるのを防ぐ「水に浮かべるボール」です。工事も、建設資材も、労働力も、メンテナンスも不要で、費用はボール1つあたりわずか40セント(約44円)。
このアイデアが採用され、紫外線をカットする黒いボールが貯水池に浮かべられ、低コストかつ迅速に、深刻な事態につながる問題を解決することができたのです。
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