当然ながら、市場経済の中では国営企業ではなく私営企業の中から大金持ちが雨後の竹の子のように生まれた。彼らは共産党の世話になっているわけではないから独立意識が強く、平気で共産党の批判をし始めたのである。私の友人のレアメタル長者たちの一部の経営者も、政府の無為無策を激しく批判することがあった。なぜなら中央政権はスローガンばかりで、経済成長の歪みを地方政府や企業の責任に転嫁することが多かったからである。
このように、社会主義体制における市場経済主義という矛盾はどこかから必ず「歪み」が表面化し問題が起こるのは、仕方のないことだ。
香港の存在意義
さて、香港に関しては、常に別の見方がある。今回、選挙制度という政治の決定過程において「一国二制度」が揺らいでいることが白日の下にさらされたわけだが、そもそも、21世紀になってからの香港の存在意義は、実質的には「共産党幹部の裏金の蓄財のために、制度しているだけ」といってはばからない中国人も多い。
ほぼすべての国営企業の支店が香港にあるが、支店の役割は、巨大な個人資産を貯め込むだけの形式的な金融機能しかない、というわけだ。確かに最近香港に行くと、昔と比べて経済的な影響力が随分と減ってしまったと感じる。実際、香港そのものが競争にさらされたことで、今回のデモが起きている部分も否定できない。
腐敗官僚の代名詞でもある「裸官」と呼ばれている官僚たちは、自分の子弟を海外に留学させ、資産を海外にシフトさせるときに香港の機能を利用している。中国には土地の所有権はないから、中国の富裕層は今や海外不動産を積極的に買いあさっている。中国政府も、海外不動産の所有については、いたずらに規制するのではなく、今や資源確保の一環として推奨しているくらいである。
だから中国人が銀座の土地を漁り、北海道や九州の原野とか水源や山林までも買いに来るのだ。中国人の投資家は不動産の取得を深く考えているわけではない。カネ余りで中国での不動産投資の妙味が薄れてきたから海外に進出しているだけである。
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