ウクライナ紛争の奇々怪々

「侵略者」が突如、「調停者」になった

8月中旬に形勢は逆転。政府軍は各地で分断、包囲され、2000人以上が捕虜となり死傷者も多いはずで、派遣されたウクライナ軍は兵力の大半を失ったのではと考えられる。ウクライナは「ロシア軍は4000人ないし5000人が本格的侵攻をした」と主張しロシアの侵略を訴えNATO(北大西洋条約機構)なども同調した。

だが、ウィーンに本部を置き、米国、ロシア、ウクライナを含む57カ国が加盟する中立的な「欧州安全保障協力機構」(OSCE)は200人以上の監視団をウクライナに派遣しているが「ロシア軍侵攻」の報告はなかった。「ロシアの軍服らしきものを着た者の流入」が報告されただけだ。

野放し状態になったのは皮肉

ウクライナ軍は91年の独立までソ連軍の一部だった。戦闘服も装備もほぼ同一で、分離派民兵なのかロシア人義勇兵なのか、それとも現役のロシア兵なのかの見分けは困難だ。ロシアがそうした者の越境や武器の密輸を阻止するには国境地帯に多数の兵力を配置することが当然必要だが、ウクライナや米国が「威嚇している」と非難したため撤収し、野放し状態になったのは皮肉だ。

こうした状況の中、プーチン氏とウクライナのポロシェンコ大統領が8月26日、ベラルーシの首都ミンスクで会談して停戦の方向が決まり、9月3日に両者の電話会談でプーチン氏が停戦合意の原案を示し、同5日にミンスクでウクライナ政府と分離派の代表が、ロシアの駐ウクライナ大使とOSCE代表の立ち会いの下、プーチン案を基礎に協議し、停戦合意に署名した。ウクライナ側がそれまで「侵略者」と非難していたロシアを調停者と認めたのはつじつまが合わず、ロシアは紛争の当事者ではなかった、と言ったのも同然だ。

ウクライナ側としては①2000人以上の捕虜を取られ、さらに大量投降が迫っていたこと、②ウクライナ政府の国庫はほぼ空で戦費が続かないこと、③ロシアから輸入した天然ガスの代金未払いで6月16日からガス供給が止まっており、冬を前に供給再開が必要なこと、などから、やむなく理屈を脇に置いてロシアの調停を受けたのだろう。

停戦合意の内容は「双方の即時停戦」「OSCEによる停戦監視」「捕虜、拘束者の解放」「違法な武装組織の撤収」「関係者を訴追しない」「両州の特定の地域(分離派の支配地域)に特別の地位を与え3年間暫定的自治権を与える法律を定める」などで、「自治権」の中には地元民による警察隊の編成や、復興に当たりロシア行政機関との協議、裁判官、検察官の任免権も地元が持つ、などが含まれると伝えられる。

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