ウクライナ紛争の奇々怪々

「侵略者」が突如、「調停者」になった

ところが今年2月27日に成立したウクライナ暫定政府は民族主義に駆られクリミアで公的機関がロシア語を使うことを禁止。ロシア系住民が武装蜂起し州庁舎、議会を占拠、地元出身者が多い現地のウクライナ軍は無抵抗で降伏し、3月16日の住民投票は投票率82.7%で、その96.7%がロシア編入を求めた。

ウクライナ東部、ロシアと国境を接するドネツク、ルハンスク2州はロシア語人口が約7割、鉱工業地帯で経済的にもロシアとの関係が深く、こちらでも「クリミアに続け」と分離運動が始まった。だがプーチン氏は3月18日、クリミア編入を決めた際の演説で「われわれはウクライナの分裂を望まない」と述べた。これは東ウクライナのロシア系住民に対し「分離運動を起こしても助けない」との通告の意味を持った。

「人民共和国」の独立を宣言

だが分離派の武装蜂起は拡大し、州都ドネツク市、ルハンスク市を占拠した分離派は住民投票を行い、5月12日に両州で「人民共和国」の独立を宣言した。もしプーチン氏が領土拡大を狙っていたなら、これは絶好の機会で、支持声明でも出したはずだが、同氏はまったく取り合わなかった。

住民の1割しかウクライナ語を使っていなかったクリミアと異なり、この東部の2州ではウクライナ語人口が約3割だから、ここをロシアが併合すれば不満を抱く住民がゲリラ戦、テロなどで抵抗する可能性がある。それを制圧しても他州に拠点を設けて潜入するため、結局はドニエプル川の東側、ウクライナの半分を占領する必要が生じ泥沼に入り込むので、プーチン氏が慎重だったのは当然だ。

一方、ウクライナ政府は分離派の行動を放置できず、西部から部隊を送り奪回を目指し5月から攻勢に出た。だが両州の州都に突入するのを怖れ、遠巻きに包囲して砲撃、爆撃を加えた。両市では食料、水が欠乏し、避難者は全体で100万人。双方の死者は4月~9月8日までで2779人(マレーシア航空機事故の犠牲者298人を含まず)に達した。

プーチン氏は、これを傍観していては国内で「同胞を見殺しにした」との非難が高まり、より強硬な民族主義者が台頭しかねないとみて、8月13日、ウクライナの反対を押し切って人道支援物資をトラック280両で送り込んだ。ほかにもひそかに武器、弾薬を供与したり、ロシアの予備役兵などが義勇兵として同胞救援に越境するのを黙認したりするなど、「介入はしていない」と言える程度の分離派支援を行ったと考えられる。米国などのシリア反政府派支援と同様、これも法的には間接侵略だ。

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