菅義偉が明かした「首相在任時」の決断・葛藤・成果 官邸主導体制「私はうまくいったと思っている」

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:安倍政権では、私は官房長官として、対コロナで最初の2020年1月の武漢からの邦人帰国、2月のクルーズ船での感染発生に始まって、ずっと指揮してきました。新型コロナというまさに国家の危機の中で、安倍総理退陣後のコロナ対応は、事情や問題点をよく知っている人が担わなければ、簡単には行かないだろうと思いました。

もう1つは経済です。コロナによって、2020年の4月~6月期のGDP(国内総生産)成長率がマイナス28.1%と、戦後最大の下落となりました。

決心を固めたのはこの2つの要素でしたね。これはやらなければダメなのかな、という思いを持ちました。その中で、総理に、という話が出たということです。

塩田:安倍首相から「次を頼む」という話があったのですか。

:あうんの呼吸みたいな感じですね。

塩田:安倍首相の退陣表明は2020年の8月28日でした。

:私は、まだ先だと思っていましたけど……。ただ見ていて、大変だなという感じはありました。体力的に大変、ご苦労されていたと思いますね。

塩田:2020年9月の総裁選では、岸田文雄現首相(当時は自民党政務調査会長)と石破茂元幹事長を圧倒的得票差で制しました。ああいう結果を予想していましたか。

:できすぎだったんじゃないですか。コロナの問題がわかっているから、それでやってほしいという思いが自民党の皆さんにあったのではないかと思いますね。

コロナ対策を最優先、ある意味でそれがすべて

塩田:政権担当の決意を固めたとき、首相としてこれだけは実現しなければ、と考えた目標はどんな点でしたか。

:はっきり意識したのは、コロナ対策を最優先で、ということです。ある意味で、それがすべてという状況ですね。

菅 義偉(すが・よしひで)/衆議院議員。1948年秋田県生まれ。1973年法政大卒。1996年衆議院議員初当選、国土交通大臣政務官、経済産業大臣政務官、総務相などを経て2012年内閣官房長官。2020年9月第99代内閣総理大臣就任。2021年10月退任(撮影:尾形文繁)

そのうえで、長年、自分が政治に携わってきた中で、これはやりたいと思ったテーマがありました。1つがカーボンニュートラルです。温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、将来的に全体として排出を実質的にゼロにするという問題です。世界全体の情勢を見ても、そろそろ日本も決断をしないとダメだと思っていました。

それから、デジタル庁の新設です。第1次安倍内閣で総務大臣を務めたときから、健康保険証や免許証とマイナンバーカードの一体化はできないのかとずっと言ってきました。「デジタルの時代」と言われて久しかったけど、遅々として進んでいなかったので、思い切って掲げました。もう1点、地方出身者ですので、地方の活性化は何としてもやりたい。その思いがありました。

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