菅義偉が明かした「首相在任時」の決断・葛藤・成果 官邸主導体制「私はうまくいったと思っている」
塩田:政権は1年で終わりましたが、就任時、何年かの政権担当を想定して、長期的に取り組みたいと思っていたプランや構想はありましたか。
菅:私は緊急登板したようなものでしたから、何年やるというよりも、とにかくまずその場に対応しなければダメだと思いました。
塩田:史上最長の官房長官でしたが、首相として政治を見たとき、官房長官時代とは、景色が大きく違ったのではないかと思います。違いを感じたのはどんな点ですか。
菅:責任ですね。最終決定権者ですから、すべての責任を負う。そういう決意でなければ、決定もできません。そこがいちばん違ったと思います。
塩田:官房長官の時代、首相官邸主導体制を推進しました。首相となった後も同じスタイルを目指したのですか。
コロナ対策、役所の縦割りは問題があった
菅:そうです。縦割りの社会、仕組みで行うのは、もうできない時代だと思いました。とくにコロナ対策を進める場合、役所の縦割りは問題があった。
ワクチンは厚生労働省の所管と決まっていますから、それに口を出せない状況でした。だけど、実際は全国に1741ある市区町村がワクチン接種の実務を担います。この人たちは厚労省とは関係も薄い。中央省庁では、地方交付税の配分などを担当する総務省のほうが圧倒的に近い関係です。こういう点を踏まえて、総務省に自治体のワクチン接種の加速を指示しました。そうしなければ、ワクチン接種は思いどおりに進まなかったと思いますよ。
塩田:政権担当の1年間、首相官邸主導体制はうまく機能したと思っていますか。
菅:いろいろ言われていますけど、私はうまくいったと思っています。
塩田:コロナ来襲の約半年後に政権を引き継ぎました。首相就任の際、感染の拡大や収束など、コロナの今後について、どう見通していましたか。
菅:正直言って、確たるものはありませんでした。コロナという見えない相手の正体がつかみ切れていなかったからです。人流を少なくするとか、手を尽くしましたが、実際にどこまで効果があるか、つかみ切れない中で対策を講じなければなりません。そこがいちばん悩ましかったですね。
ですが、海外でも、ワクチンを打ち始めて2回目の接種が40%を超えると感染者が減少し、状況が変わってくるという情報が入っていました。それで、私も日本の接種率が43~44%になったとき、会見で「明かりが見え始めた」と言いました。それと、重症化を防ぐ治療薬ができた。これがすさまじく効く。それで、そういう発言をしたんです。実際に、その後から感染者は減少し始めました。
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