菅義偉が明かした「首相在任時」の決断・葛藤・成果 官邸主導体制「私はうまくいったと思っている」
菅:海外では、ロックダウンで都市間移動の封鎖、外出禁止、罰金というすさまじく厳しい措置を繰り返し取りましたが、それでも収束できなかった。日本は緊急事態宣言、まん延防止措置を講じました。感染を一時的に縮小させる効果はあると思いますが、根本から解決するのはなかなかです。そういう状況で明確になったのは、やはりワクチンでした。
治験をやっていて、とくにファイザーとモデルナはずば抜けて高い効果を示していました。ですから、ワクチンにすべてかけようと腹をくくりました。1日も早く、1人でも多くの人がワクチン接種することが、国民の命と暮らしを守るのに直結すると自分で確信して臨みました。
塩田:ワクチンは、日本の場合、開発技術も生産拠点もなく、すべて海外依存です。
菅:まずファイザーの確保でした。2021年4月の訪米では、もちろんアメリカのジョー・バイデン大統領との首脳会談などで日米間のさまざまな問題の解決について話し合いましたが、私の大きな使命のもう1つは、ファイザーを5000万回分、2021年9月までに確保することでした。それは非常にうまくいった。事前にいろいろな人が対応して、最後にファイザーのトップとの電話交渉で確約を取りつけました。そこが1つのポイントですね。
帰国後、5月7日に記者会見で「1日平均100万回以上、打ちます。65歳以上の人は7月いっぱいで2回接種を打ち終えます」と思い切って宣言しました。そのとおりに打ち始め、結果的に6月が110万回、7月が150万回まで行った。ところが、8月分が足りなくて、穴が空きそうになった。ある意味で、大きなピンチだったんです。
ファイザーCEOを迎賓館に招いて
菅:ちょうどそのとき、東京オリンピックの開会式で、ファイザーのCEOのアルバート・ブーラさんが日本に来ていました。私はそれを知っていたので、「朝食を」と赤坂の迎賓館に招待した。基本的に迎賓館を使うのは国家元首で、お客様として民間人を招待するのは初めてです。河野太郎ワクチン担当相も一緒でした。
迎賓館の和風別館には、庭があります。素晴らしい樹木と池があり、鯉が泳いでいます。招待されると、大抵の人が池の鯉にえさまきをやります。アメリカのドナルド・トランプ大統領が来たときも、当時の安倍総理と一緒にえさをまいた。
ブーラさんはそのシーンをテレビのニュース番組か何かで見て記憶にあり、「あ、これですか」と、えらく興奮していました。そこで、えさをまいてもらい、心からおもてなしさせていただいた。結果として700万回分のワクチンを前倒ししてもらった。それで8月分が間に合ったから、目標どおり11月で希望する方の接種を終えることができたんです。やはりトップ同士の信頼関係が重要だと思っています。
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