また、ネットの普及に伴って、お客様とのコミュニケーションも変わってきています。かつては企業側からお客様へ一方向の発信であったものが、今ではお客様が企業へダイレクトにつながれるようになったり、お客様同士がつながるようになったりしているのです。
「昔、商品の価値やイメージは企業が作り出していました。今の時代は商品がよいとか、よくないは個人が決めること。無印良品の場合は、この商品いいね!という声がソーシャルメディアを通して広がりやすい。そして、皆の感覚とずれたことを共有しても広がらず、真っ当な意見が広がる傾向があると思います」
ただ売りたいという一時的なマーケティングや広告は、効かなくなってきています。一方でよい商品であれば、地道にコミュニケーションを続けることで、お客様同士でのコミュニケーションを通じて広がっていく土台ができているのです。デジタルの役割はコミュニケーションを通して、お客様をきちんと理解することにあります。
驚きのユニークなアクション
そして、「顧客時間」という概念や、店舗とWEBを連動させたお客様とのコミュニケーションという考え方は、無印良品の面白いふたつのアクションにつながっています。
ひとつは、2013年に実際に運用が始まったMUJI Passport。現代人なら肌身離さず持っている携帯電話にインストールされる会員アプリで、これをインストールすると定期的にクーポンが無印良品から届いたり、購入に応じてポイントが貯まり、店舗で使えるという仕組みです。
これだけであれば、よくあるクーポン型の購買喚起にしか見えません。しかし、このアプリに付随しているほかの機能に、「顧客時間」を共有する視点を見ることができます。
たとえば、購入前の時間を見てみましょう。ネットで欲しい商品が見つかった、けれども店舗で一度実物をチェックしたい。そう思っても、無印良品の店舗は大型店から小型店までたくさんあって、品ぞろえも異なります。わざわざ店に行ったのに、在庫がなかったという経験は誰でもあるでしょう。そこで、このMUJI Passportで欲しい商品を検索すると、その在庫がある店舗を一覧で距離や地図と共に表示してくれます。
これはまさに購入前という「顧客時間」で考えると、お客様にとっては便利なサービスです。また無印良品側にも、どのような検索からどのように店舗での購買が行われるかの経路がわかるという点で、有益なデータが取れるサービスであると言えます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら