ネット店舗はいらない!?無印良品の戦略 「WEB vs. 実店舗」の対立は、もうやめよう

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このようなお客様とのコミュニケーションは、お客様の本当の声を聞きたいと思っている企業は、一度はやってみたいアクションです。しかしながら、コストだったり、すべての意見をオープンにしてしまうことのリスクを考えたりで、なかなか踏み切れないのではないでしょうか?

しかし、無印良品では、商品を売るというよりも、お客様との接点を増やす、さらに言うと、お客様と共に商品やサービスをよくしていく、という考え方が「顧客時間」と相まって、勇気を持ってアクションしているのです。

買い物の楽しさを追求すれば実店舗はなくならない

ここまで、「WEB vs. 実店舗」ではなく、「WEB & 実店舗」というコミュニケーションを見てきました。しかし、WEBがデジタルを極めると同時に、「店舗はアナログを極める」と冒頭にあった、アナログとは何でしょうか?

「実店舗がなくなることはありません。ひとりで行っても誰かと行っても、やっぱり店舗には買い物自体の楽しみがあります。そして、新しい発見は店舗にあると思います。だから、店舗は買い物の楽しさ、新しい発見、非日常性を提供できないといけません」と、奥谷さんは店舗での買い物の楽しさがあってこその無印良品であると強調します。

私たちの周りはモノにあふれ、モノを売る人たちであふれています。それはインターネットの世界でも同じことです。むしろ、ネットで販売したほうがコストも投資も低く済み、売り場を確保する必要もないため、ネット上のほうがよりモノにあふれているというのが正しいのかもしれません。

逆にネットがモノ、もしくはモノを売る人にあふれてくると、実店舗の重要性は上がっていきます。実店舗は時間とコストと覚悟がないとできないということを、お客様も感じています。ブランドやコミュニケーション、買い物の楽しさが実店舗を通じて作られて、そこで作られた関係性をベースに、WEBやネットでのコミュニケーションが広がっていく、その循環が大事になってくるのです。

私たちマザーハウスも、ネットの時代だからこそ、お客様とのリアルなコミュニケーションを大事にして、店舗の価値を日々議論し、新しいイベントなどを続けています。確かにネット上のコミュニケーションに対してコストも時間もかかります。しかしそれ以上に、お客様の表情や感情を感じることができたり、一体感を感じることができるのも店舗だからこそです。

どうしても2項対立で語られがちな「WEB」と「店舗」。逆にネット販売が増えている今だからこそ、店舗でしかできないことを追求していくべき時です。そしてネットと店舗がそれぞれ独自性を発揮しながら、お客様とのコミュニケーションを増やして、愛されるブランド作りを考えていくべきなのかもしれません。

【お知らせ】
マザーハウスでは本連載のテーマに合わせてマザーハウスカレッジという、みなさんで議論する場を設けています。次回は、『若い力が日本の「伝統工芸」を「伝統産業」へ変える』というテーマで、株式会社和える代表取締役の矢島里佳さんをお呼びします。詳しくはこちらをご参照ください。
山崎 大祐 マザーハウス 副社長

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やまざき だいすけ / Daisuke Yamazaki

1980年東京生まれ。高校時代は物理学者を目指していたが、幼少期の記者への夢を捨てられず、1999年、慶応義塾大学総合政策学部に進学。大学在学中にベトナムでストリートチルドレンのドキュメンタリーを撮影したことをきっかけに、途上国の貧困・開発問題に興味を持ち始める。2003年、大学卒業後、 ゴールドマン・サックス証券に入社。エコノミストとして、日本及びアジア経済の分析・調査・研究や各投資家への金融商品の提案を行う。2007年3月、同社を退社。株式会社マザーハウスの経営への参画を決意し、同年7月に副社長に就任。副社長として、マーケティング・生産の両サイドを管理。1年の半分は途上国を中心に海外を飛び回っている。

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