桐谷健太「大阪の兄ちゃん」感覚を大事にする訳 俳優歴20年、役者以外の自分も大切にする現在
それは歌を歌っている時には大事なことで、人に気持ちよく聞いてもらうためにこうして歌おう、なんて思って歌っていたら自分も気持ちよくないし、聞いてる人も気持ちよくないかもしれない(笑)。この役の場合、ライブのシーンは実際に外国の方やエキストラさんが入って盛り上がっている状態を、同時録音しているんです。そこはハル(桐谷さんが演じた役)の生きる場所でもありますからね、その感覚で歌っていました。
── あのシーンは臨場感があって、観ているこちらも気持ちが高揚しました。当時のライブハウスのシーンなどは、セットですか? それとも実際に残っている場所での撮影ですか。
桐谷:美術的な演出はあるでしょうけど、基本的に今もある場所での撮影でした。コザの街には当時の面影がまだまだ残っているんです。メンバーが出入りしているバー、あの、米兵たちが出兵する前に1ドル札にサインして壁に貼って、また帰ってきてこの1ドルで飲むぞと願をかけていった場所は実際に今も営業しています。でも今はほとんど、恋人たちが1ドル札を貼っていますけど。何をしとんねんって思いました(笑)。
── ワハハ、そんなことになっているんですね。ところで、“演じる時に楽しみたい”という感覚は以前からそう考えていたんですか?
桐谷:以前はそんな余裕はなかったかもしれないですね。ある種、もっと役に入らないといけないと思い詰める感じがあったかもしれません。でも今は、“入って抜けて、入って抜けて”が気持ちいいなって。助走があって、用意スタートでバンとそれ(役)に入れて、あとは大阪の兄ちゃんに戻っていく。自分の真ん中に帰ってくるような感覚に、ちょっとずつ変わっていったのかもしれないです。
20年近く役者をしてきて
── 20年近く役者をされて、ずっと第一線で活躍し続けるのは大変なことだと思います。役者を始めた頃は、爪痕を残すと言うか、まずは自分を知ってもらいたいというところから始まったと思いますが、経験を重ねるたびに、自分なりの役者としてのスタイルができてきたのでしょうか。
桐谷:そうですね、もちろん自分のやる役を創造することにも、間違いなくベストを尽くしてやるんですけど、それプラス、いろんな経験をするなかで、自分の人生を豊かにしたい、クリエイトしたいという思いが凄く強まったんだと思います。視点が大きくなっていったんでしょうね。