桐谷健太「大阪の兄ちゃん」感覚を大事にする訳 俳優歴20年、役者以外の自分も大切にする現在

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── それはすごい話ですね。

桐谷:バンドを始めた頃は米兵たちも上から目線で、ディープパープルをやれとか、どこそこのバンドをコピーしろとか言ってきたけど、だんだん戦況が悪くなってくると、兵士たちも祈るように「明日は死ぬかもしれない、だからあの曲をやってくれないか」と頼んでくるようになったそうです。自分達がずっと演奏しているうちに、米兵たちがリスペクトしてくれるのも感じた、とおっしゃってました。

── 皆さんそれぞれに複雑な思いがあるのでしょうね。

桐谷:もちろん、沖縄の方たちの中には、米軍のことを憎んでいる人もたくさんいるし、そう思われて仕方ないことが実際たくさんあった。ただ、ずっと接してきたチビさんたちからすると、次第に「こいつらも被害者だ」と感じたそうです。すべて戦争が起こした。全員を狂わせてしまうのが戦争だと、改めてハッキリと戦争なんか嫌だと感じました。ベトナム戦争は第二次界大戦と違って兵隊に行きたがる人がいなかったから、そのあたりの不良たちを集めて戦場に行かせていたという部分もあるみたいで。その客を相手にバンドをやっている人たちだから、ものすごい肝も据わっているんです。チビさんも身長は低いけど、他のメンバーが殴られないように絶対にステージの上に客は上がらせなかったって。

── 命がけですね……。

(写真:トヨダリョウ)

桐谷:チビさん自身、お父さんがアメリカの人で、子どもの頃にはお父さんがいなくなっちゃったらしいです。お母さんもそんなに長生きしたわけではないようで、全然血のつながりのないおばあちゃんに育てられたんだけど、そこでめちゃくちゃ愛を知ったと言ってました。その経験を俺はしているから、血のつながりなんて俺には関係ないんだって。その言葉は凄く響きましたね。

自分が気持ちいいと感じることには、間違いはないですから

── この映画には桐谷さんがバンドのボーカルとして歌を歌うシーンもたくさん出てきますが、歌う時にはどんな気持ちを込めていたのでしょう。

桐谷:役で歌う時は、その役の感覚を大切に歌いますが、僕自身でいうと、どうであれ気持ちよく歌えたら正解みたいなところがあるんです。もちろん聞いている人が気持ちよくなってくれたらうれしいとは思うんですけど。でもそこって、こちらからは選べないじゃないですか。人によっても捉え方は違うだろうし。さっき言った、現場が楽しいのが大切というのと同じで、自分が気持ちがいいとか楽しいと感じることには、間違いはないと思うので。

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