ハデハデ靴・メレルの「大ヒットのヒミツ」と「挑戦」《それゆけ!カナモリさん》

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■山ガールを取り込んだカラーバリエーション

 背景にあるのが、「山ガール」の増加だ。「森にいそうな女の子」をテーマとする、ゆるく雰囲気のあるモノを好む若い女性の服装やライフスタイルを指す「森ガール」とは違い、山ガールは本気で登山やアウトドアを愛する女子のことを指す。

 ちょうど前出の記事と同日の日経MJ3面コラム・「底流を読む」に、「山ガールにみる需要想起」という記事が掲載されている。日本生産性本部の「レジャー白書2010」によると2009年の登山人口は前年比2.1倍に急増した。今年もさらに増えている。ブームの牽引車は「山ガール」とある。

 レギンスに見立てたサポートタイツや、山スカートなど、従来の山好きなおじさんたちが見たら、「山をなめるな!」と怒りだしそうなファッションに身を包み、北アルプス、八ケ岳連峰などを闊歩しているのだ。

 2009年11月20日付日経MJでは、スポーツ用品店「オッシュマンズ・ジャパン」の同年10月の売上高を基に登山靴のランキングを発表しているが、メレルの「カメレオン2ストーム ゴアテックスXCR」が首位に立っている。

 余談ながら、実は筆者もシリーズの目にも鮮やかな色に惹かれて朱赤のシューズを購入し、「せっかく靴もあることだから・・・」と昨夏は立山を歩いてきたのであった。まさに同社の戦略に乗った一人なのだ。

 ソニーの創業者、故・盛田昭夫氏は著書『21世紀へ』の中で「製品を商品としようとする場合には、その製品を手に入れたいという欲求を人々の間に喚起させなければ、いかに優れた製品であっても商品にはなり得ない」と述べている。

 記事によると、メレルは今後さらなるチャレンジを考えているようだ。

 メレルはほぼシューズが中心。今後はウェアなどの販売にも力を入れ、全身でメレルを楽しんでもらいたいとメーカーのコメントが掲載されている。ザ・ノースフェースなどの総合アウトドアブランドへの挑戦だ。その戦略として、顧客に占める女性の比率は現在、3割にとどまるが、将来は5割まで引き上げる考えだという。

 筆者はザ・ノースフェースのファンでもあるのだが、同ブランドもなかなかビビッドなカラーのウェアも展開している。しかし、メレルとしては、「アウトドアブランドで“色”といえばメレル」という、トップ・オブ・マインド(第一想起)を獲得することが求められる。かつて、「カジュアルウェアで“色”といえばベネトン」というブランド想起がなされていたように。

 アウトドアは山に限らない。夏のコンサート「フェス」でもメレルのアウトドアシューズが目立つらしく、最近は「川ガール」や「海ガール」も出現し始めているという。

 メレルのターゲット顧客層はどんどん拡大している。しかし、ライバルも多い。その心をどこまでつかむことができるか、同社の挑戦に注目したい。
《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2010年8月27日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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