このように、中小企業の採用活動はどんどん後ろに追いやられることになるのです。とはいえ、いつまでも採用活動を伸ばすことはできません。学生も、大学4年生の12月にもなると、就職留年を意識し始めるからです。中小企業に関しては、目標の人数を確保できないままタイムアップ、というケースが多発すると考えられるのです。
不人気大量採用企業にとっては大チャンス
不人気大量採用企業とは、労働条件の厳しさゆえに離職率が高く、世間的にも評判が芳しくない企業群です。いわゆる「ブラック企業」も、このエリアに入ります。このタイプの企業群は離職率が高いのが特徴ですが、その欠員を補うために、新卒の採用には非常に力を入れています。
この手の企業の場合、人手不足が売り上げの多寡に直接の影響を及ぼすので、採用活動も熱心に、コストをかけて行ってきます。当然、採用活動開始時期のルールもお構いなしですので、自社としての行動は、就活が後ろ倒しになろうとなるまいと、これまでと変わることはありません。
一方で、日本の伝統的大企業が、表向きの採用活動時期を後ろ倒しにするので、このタイプの企業は、競争相手が少ない中で採用活動を進めることができます。
特に、学生からの人気が高い「日本の伝統的大企業」と「外資・メガベンチャー」は、水面下でも中下位校の学生には積極的にアプローチしません。そのため、このタイプの企業にとっては、中下位校の学生にアプローチがしやすくなるという意味で、今回の就活後ろ倒しは有利に働くと考えられます。
クローズドの採用はコストがかかる
結局、今回の後ろ倒しで得をするのは「不人気大量採用企業」だけです。そのほかの企業は、クローズドな採用活動を頑張って、やっとこれまでと同じ状況を確保するか、あるいはこれまでよりも悪い状況を甘んじて受け入れるしかありません。
ここでハッキリさせておきたいのですが、企業も、好きこのんでクローズドな採用活動をしたいわけではありません。リクルーターを大学に派遣することは、就職支援サイトを通じてエントリーを受け付けるより、コストも時間も余分にかかるからです。
私の知り合いの採用担当者が、こんなことを言っていました。
私が冒頭の学生との会話で、「企業も『被害者』だと思う」と言った意味が、わかっていただけたかと思います。今回の「後ろ倒し」は、企業にとっても、大変な出来事なのです。
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