ニコンが“技術力”の金看板外す決心、カメラ業界の壁が融解《新しい経営の形》

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垣根なくなる電子機器 他業界発を消費者は選択

ニコンカメラの神髄である一眼レフ。高速連写、画質、画像処理、どれも技術では他社の追随を許さない。初級モデルで約7万~10万円の一眼レフは原価2万5000円程度と推定され、粗利率も高い。

一眼レフへのステップアップを狙い、これまで、機能は格下のコンパクトデジカメにも力を入れてきた。コンパクトは技術的なハードルが低く、ソニーや韓国サムスン電子といった電機メーカーの台頭が著しい市場。機能競争は一巡し、ここ数年は価格競争が激化している。ニコンでさえ、台湾OEM(生産受託)メーカーとシビアな価格交渉をし、ようやく採算を確保する程度だ。

が、消耗戦に挑んでまで重視してきたステップアップ戦略が、もはや意味を成さない世界に、突入しようとしている。デジタルカメラ業界の壁が“融解”しているのだ。

猛追を仕掛けるのは、携帯電話やスマートフォンである。画素数1300万画素以上、フルハイビジョン動画対応と、カメラ顔負けの新製品が続々と出現。静止画を手軽に撮れるという従来の価値に、疑問符が付き始めた。

こうした環境変化は、ニコンの存在そのものを揺さぶる。カメラ業界でこそ知名度のあるニコンだが、ライバルが業界の枠を越えたとき、その存在感は薄れてしまうからだ。

6月、ソニーが投入したミラーレス一眼カメラ「NEX」の衝撃は大きかった。一眼レフからミラーを取ったレンズ交換式カメラで、287グラムととても軽い。発売後すぐに国内市場を席巻、シェア2割を握り、相対的にニコンのシェアは低下した。コンパクトはともかく、一眼のライバルはキヤノン1社のはず、だった。だが消費者は、後発組であり、他業界発の製品に飛びついた。

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