ニコンが“技術力”の金看板外す決心、カメラ業界の壁が融解《新しい経営の形》
NEXは機能的には一眼レフに劣り、価格も7万円前後と安くない。ただ、コンパクト並みの小ささと、レンズ交換ができる醍醐味を併せ持つ。ボタンを最小限に抑え直感的な操作感を重視するなど、従来の、カメラ愛好者向けという一眼カメラのイメージを一変させた。守りの姿勢に固まっていたニコンやキヤノンが出せずにいた商品。消費者はソニーの挑戦を好感したのだ。
“撮った後”の楽しさ提案 個人を生かす会社へ回帰
「今のニコンブランドは、マジメで保守的。ワクワク感や楽しさが足りない」と木村社長は自覚する。ここ10年、ニコンの立ち位置はぶれなかった。キヤノンと比べて低い利益率も、むしろ「品質へのこだわり」と肯定してきた。その一貫性が、進化の機会を封じてきたともいえる。
ニコンのブランドイメージを変える──。それを推進するのは各個人でしかありえない。ここ数年、個性的な企画は、幾度もの会議を経て平凡な商品に収斂してきた。「技術開発こそ誇れても、企画やマーケティングの水準、スピードはまだまだ」(木村社長)。個人のアイデアをいかに潰さず、いかに早く形にするか。「すべての領域でスピード感ある意思決定の仕組みを作る。今後は、満点でなくても、とがった商品をどんどん出す。経営陣の意思決定を商品という形で見せ、社員の意識から変える」(同)。それが喫緊の課題だ。