ニコンが“技術力”の金看板外す決心、カメラ業界の壁が融解《新しい経営の形》

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 帰国後、木村氏を待っていたのはデジタルカメラという新事業の立ち上げだった。フィルムからデジタルへの転換期、業界構造は大きく変わろうとしていた。ニコンがプレーヤーにとどまるには、技術も顧客も販路も、すべてを大車輪で見直さなければならない。木村氏はマーケティング担当として奔走、プロ用カメラといえばニコンかキヤノン、という看板を確立する。一方、フィルム時代の競合数社は荒波に姿を消していた。

その後、苅谷前社長下の5年間で、ニコンは営業利益1000億円の会社になった。カメラ、半導体製造装置の主力2事業は、1位に限りなく近い2位。リーマンショックによる落ち込みから、今期は600億円近くまで利益を戻す計画だ。

そして今年、今度は社長として木村氏に大仕事が回ってきた。それはある意味、より困難な課題かもしれない。ニコンの存立基盤であり“顔”でもある、「技術偏重」の企業体質を早急に脱ぎ捨てよ、という大転換の実行である。それは、カメラ産業そのものが消滅するかもしれない、というこれまで遭遇したことのないリスク。市場そのものが激変する今、“技術のニコン”のままでは脱落する可能性さえ生じてきたのだ。

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