《プロに聞く!人事労務Q&A》学生インターンシップがケガや病気になった場合、どのように対応すればいいでしょうか?

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また、「工学部などの学生が工場実習をする場合には、大学などの教育目的で、教育機関から委託費が支払われ、実習内容も教育機関での実習規定等によるもので、支給される実習手当も一般労働者の賃金や最低賃金と比較して低く、実習補助ないし恩恵的な給付であると認められる場合、交通費などが支給されていても労災保険の適用はない」(1982.2.19基発121号)とする通達もあります。

したがって、インターンシップ期間中の学生であっても、アルバイト等のように最低賃金額以上の賃金が支払われている、または労働契約が締結されているなど、その実態から労働者と見なされる場合には労災保険法の適用を受けることになります。

他方、労働者と見なされない場合には、労災保険の保護を受けることはできないことになりますが、インターンシップ期間中の学生であっても会社には安全配慮義務があり、会社施設の欠陥または就業体験中に生じた事故に対して会社に過失が認められれば、損害賠償義務が生じることがあります。したがって、こうしたリスクも想定して、その受け入れに当たっては、民間保険会社の傷害保険等の保険商品によって、万一に備えておくことも必要です。

なお、高等学校や大学の正課または課外活動としての実習として位置づけられている場合には、学生教育研究災害傷害保険が適用になります。その商品の付帯賠償責任保険としてインターンシップ・教職資格活動等の賠償保険などがあり、インターンシップ、介護体験活動、教育実習、保育実習、ボランティア活動時の事故による傷害に対応しています。

今後、インターンシップ制の普及に伴い、その導入に当たっては、万一、事故が生じた場合の対応とリスクへの備えを十分に検討して体制を整えなければなりません。

石澤清貴(いしざわ・きよたか)
東京都社会保険労務士会所属。法政大学法学部法律学科卒。日本法令(人事・労務系法律出版社)を経て石澤経営労務管理事務所を開設。
商工会議所年金教育センター専門委員。東京都福祉サービス第三者評価者。特に労務問題、社内諸規定の整備、人事・賃金制度の構築等に特化して業務を行う。労務問題に関するトラブル解決セミナーなどでの講演や執筆多数。


(東洋経済HRオンライン編集部)

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