《プロに聞く!人事労務Q&A》「人事制度の改定」を理由に降格や減給を行なうことは可能ですか?

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判決では、「不利益が大きく、給与制度変更は法的な要件を満たさない」とした原告勝訴の一審判決を取り消し、賃金制度の変更について、労働生産性を高めて競争力を強化する高度の必要性があり、成果主義型の賃金制度は必要性に見合った内容であり合理性があるとしたうえ、賃金減額による経費削減を図るものではなく、自己研鑽による昇格・昇給の機会が平等に保障されている、最低限の人事考課制度がある、会社は従業員への周知に努め、一定の経過措置を設けたことなどにより、労働条件の不利益変更を認めました。この裁判は、2008年3月28日に最高裁が従業員側の上告を退ける決定をして東京高裁判決が確定しています。

このような裁判例等から法的に合理性が認められるポイントを示しますと、

(1)人事制度の改定に必要性があるか
(2)改定した人事制度の内容は公平、平等であり必要性に対して合理性があるか
(3)従業員が被る不利益性はどの程度であるか
(4)会社は人事制度の内容について、従業員への周知に努めたか
(5)代償措置をとるなどの一定の経過措置を定めているか
(6)管理職の降格・減給を行うときの根拠および基準は明確か

などの状況を総合的にみて判断することになります。

ご質問のケースでは、人事制度の改定そのものは否定されるものではないと判断することができますが、降格・減給を行うにあたり一定の経過措置こそ設けられているものの、人事制度改定の必要性や人事制度の内容の合理性、管理職であった従業員が降格・減給となった根拠および基準などによっては、法的に問題となる可能性もありますので注意が必要です。

朝比奈睦明(あさひな・むつあき)
東京都社会保険労務士会所属。1990年日本大学文理学部卒業。社会保険労務士事務所勤務を経て、2000年4月に社会保険労務士朝比奈事務所を開設。 主な業務分野は、賃金・評価制度等人事諸制度の構築、就業規則作成、社会保険事務アウトソーシング等。著書に「図解 労働・社会保険の書式・手続完全マニュアル」(共著)。


(東洋経済HRオンライン編集部)

人事・労務が企業を変える 東洋経済HRオンライン

 

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