第1回目として、これらの企業と神(神事・祭事・仏事)との関係について見ていきましょう。
100名の部下と神棚にお参り
数多くの日本型サスティナブル企業は、神事・祭事・仏事を重要視しています。神棚や御札、時に自社で創った神社には、事業に関わりの深い神様が祀られています。たとえば、日本酒業界では、豊作の神様、お酒の神様、建設では建築土木の神様、製造業では安全の神様といった具合です。経営的にはさまざまな課題を抱えた金剛組ですが、現在でも月に2回、朝礼で聖徳太子をお参りしているそうです。業種によってさまざまな神様が存在しますが、共通するのは、自然や安全など自分で制御しきれないことへの畏怖の念です。
ある長寿企業に勤務する40代の部長は言いました。「正直、若いころはなんだかなぁ……と思っていましたが、今の歳になって毎年行っている神事の意味が分かってきました」
最先端技術を強みにグローバルに展開する企業のイノベーション担当の課長は、定期的に約100名の部下と一緒に工場に設置してある神棚にお参りをするそうです。「二礼、二拍。最初はばらばらでまったく合いませんでした。やり続ける中で、完全に一致するようになった瞬間があったのですが、そんなときにリーダーとしての自覚というようなモノがわいてきた気がします」
ちなみに、本書の執筆者の一人は事業承継者ですが、インタビューを重ねる中で、自身の会社にも神棚を設置するに至りました。
自然にしても、安全にしても、努力によって改善することはできますが、最後は、人事を尽くして天命を待つ、という心境にならざるを得ません。神棚や御札にお参りをするという行為は、人智を超えたあらがえないものへの「謙虚」な気持ちと、生かされていることへの感謝の気持ちを行動に表すことになります。
このようにあらがえないものへの畏怖の念や、謙虚・感謝の気持ちを身近に感じることは、往々にして独りよがりになりがちな社長や創業者一族などへのガバナンス的な効用もあると考えられます。
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