縮む未来を映す「松坂屋上野店のデパ地下」《それゆけ!カナモリさん》

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■縮小する市場での戦い方

 日本の総人口は2004年12月の1億2783万8000人をピークに、今後加速度的に減少していく。国立社会保障・人口問題研究所の中位推計では、2050年には1億人を切って9515万人になるとしている。実に50年間で4分の1減少してしまう。筆者もうっかりするとあと50年くらい生きてしまうかもしれない。その時、人口が9500万人に減少した日本に住んでいるのだ。

 縮小する市場で「市場シェア」を占有する意義は低下する。一定シェアを維持できたとしても、パイ自体が縮小していくからだ。

 「目指すべくは、市場シェアよりも顧客シェア」と言われたのがCRM(Customer Relationship Management=顧客関係性管理)が注目された2000年頃であった。一人一人の顧客を囲い込んで、その顧客のLTV(Life Time Value=生涯価値)を最大化する。反復利用を長期にわたって促し、自社に落としてもらう金額をできるだけ多くすることが目標だ。10年が経過して市場縮小が明確になった今、改めてその概念の重要性を高まっているのである。

 顧客シェアを高めるためには、囲い込むべき顧客が「自分にピッタリ」と思ってロイヤルティーを高めてくれることが欠かせない。それがデパ地下であれば、自分にピッタリな分量の販売であり、日々の食事にピッタリな品揃えであり、そして、自分に対するアドバイスや提案なのだ。それを、松坂屋上野店のデパ地下は愚直に実行し始めたのだといえる。

 景気が回復しつつあるとはいえ、昨今の環境は「ハレの日」を謳歌するゆとりはなく、必死に日々「ケの日」を生きる暮らしである。その中でもゆとりがある層はといえば、今のところ年金がしっかり出ている現在の高齢者と、世代間格差の勝ち組年代ともいわれる中高年だ。記事では売場責任者が「安さを求めるなら、近隣に別のスーパーがある。うちの顧客は求めているものが違う」と言い切っている。ターゲットを絞り込んで、そのターゲット顧客にピッタリな提供価値とポジショニングを明確化しているのである。

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