戦傷者は「想定外」という、自衛隊の平和ボケ

「国内では銃創や火傷は負わない」との前提

自衛隊の看護陸曹にできることは限られている

戦争や紛争で軍隊が戦えば必ず犠牲が生じる。これは自衛隊であっても例外ではない。

ところが、自衛隊は「戦時には死傷者がつきもの」ということを本気では想定していない。死傷者を前提としていないために、戦死者や戦傷者を減らす、あるいは被害を最小化するという意識が極めて低い。大量の死傷者は「想定外」としているのだ。

これは軍隊、特に米軍や英軍のように実戦を多く経験している軍隊とは異なる点だ。実戦となれば、恐らく自衛隊は衛生軽視のために米軍や他の軍隊の何倍、あるいは一桁も二桁も多い戦死者を出す可能性が極めて大きい。自衛隊の有事の衛生(医療)体制は軍隊として、欠落している面が多いためだ。

多くの読者は「まさか、そんなはずはない」と疑っているのではないだろうか。だが、本稿を読めばこれは決して大げさな話ではないことがご理解できるはずだ。

支給品は包帯2本だけだった

戦死者、戦傷者が出ることを意識していないということは、すなわち実戦を想定した準備をしていないということになる。有り体に言えば平和ボケである。このような組織がいくら先端兵器を導入しようが、実戦において精強さを発揮できない。

人命を軽視する軍隊は、弱い。これは多くの戦訓が示すところだ。実戦に際して軍に対する将兵の信頼は大きく減じ、士気はガタガタに下がる。米軍にしてもイスラエル軍にしても強い軍隊は損害をミニマイズする努力と費用を惜しまない。

自衛隊の衛生軽視の一例をまず挙げよう。陸自(陸上自衛隊)の「個人携行救急品」(ファースト・エイド・キット)だ。陸自は東日本大震災の「戦訓」もあり、平成24(2012)年度予算で個人携行救急品の整備に着手した。それまでこの種のものが存在せず、包帯を2本支給するだけという、第二次大戦レベルの救急キットしかなかったためだ。

「個人携行救急品」を導入しただけでも大きな進歩だといえる。だが、この「個人携行救急品」にも問題がある。

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