戦傷者は「想定外」という、自衛隊の平和ボケ

「国内では銃創や火傷は負わない」との前提

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米軍の野戦救急型の装甲ハンヴィー

そもそも応急処置で素早く止血、気道の確保ができなければ出血多量や心肺の停止で本来助かる患者も助からない。逆に言えば素早く的確な処置を行えば、生命や手足を失う可能性が大きく減る。また応急処置が適切であれば回復が早く、僅かな期間の療養で前線に復帰できるはずの隊員が、適切な処置をうけなければ不要な出血や感染症などによって重体や死亡する可能性は大きくなる。

いくら設備が整った総合病院に担ぎ込まれても、出血多量や呼吸や心臓が止まって死んだ人間が生き返るわけではない。陸幕の回答は応急処置の原則を無視したものである。

また、応急処置が不十分なために重い後遺症が残れば、そのことがその後の国の医療費負担を圧迫することになり、社会保障費の増大にもつながる。

ゆえに実戦経験が多い米軍などではファースト・エイド・キットの充実、将兵の救急処置の訓練に力を入れ、常に向上を怠っていない。米軍はイラクやアフガンで数千名という戦死者、その何倍もの手足や視力を失うなどの犠牲を出したが、これがベトナム戦争当時であればその何倍もの被害が出ていただろう。

陸幕の回答は、「我が国では戦争は起こりません。ですからそんな怪我はしません」と強弁しているようなものである。

高価な装備に予算を重点配分

恐らく、陸幕は予算を惜しんでいるだけだろう。PKO用ならば少量の調達で済む。だが国内用のセットは万単位の数が必要だ。陸自は防衛大綱で戦車の数を現在の実数の約600輌から300輌に減らされているもかかわらず、まだ使える90式戦車340輌を廃棄して新型の10式戦車を調達するという贅沢を行っている。他国より3倍高額な装甲車輛、8倍高額な小銃を購入するなど、「パレードの際に見栄えのいい火の出る玩具」ばかりに予算を投じてきた。

こうした装備が優先された挙句、地味だが隊員の命や身体を守り、戦力の基盤維持に必要な衛生(医療)関連の予算は軽視されている。これは旧軍以来の悪しき伝統といえるだろう。

筆者はこの「個人携行救急品」の件を、昨年以来、何度も報じてきた。そのためか、陸自内でも見直しの機運があるという。また来年度の予算で諸外国の衛生のあり方を調査するための予算も要求されている。自衛隊内部でも一部の幹部は中国との緊張の高まりに刺激されて、より実戦的な方向に改革しようと努力をしているようだ。

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