「中学生頃から、母親の手伝いみたいな感じで料理はしていたんですよ。家事というよりは趣味に近い感じで。結婚の1年前から同棲していたんですが、その時から料理担当は僕ですね」
料理はもともと得意だったこともあり問題はなかったが、実際の家事負担は、杉山さんの割合が多かったという。女性が専業主婦になり、男性が仕事で稼ぐ……という価値観が多い環境で育ったこともあり、自分でも気づかないうちに、心の奥底でモヤモヤした想いを抱いていたと振り返る。
「僕の思い込みだったんですが、『結婚すれば、女性は自然と家事や育児をするようになっていくものだ』という考えがあったんです」
しかし、駆け出しのデザイナーとして懸命に働く妻に、その変化はなかなか訪れなかった。杉山さん自身、家庭のことをすること自体には何の不満もない一方で、世間一般的な夫婦との違いや、自身の結婚生活観との違いについては、違和感を抱いていたという。
そして、30歳を過ぎた頃に、ターニングポイントとなる出来事が起こる。
「細かいことはおぼえてないんですけど、僕がなにかを独断でやったことがあって、妻が『普通そういうのって奥さんに言うじゃん』とツッコミを入れてきたことがあったんです。で、僕はそれに対して『そういうこと言うなら、そっちが普通の奥さんをやってよ』って言ってしまって。その瞬間、『自分が結局、普通の奥さんを求めてたんだな』って気づきました」
娘の行方不明事件を経て「兼業主夫放送作家」に
衝突によって、自分でも自覚していなかった本音に気づいた杉山さん。さらに、兼業主夫を名乗るきっかけとなった、大きな事件が起こった。
「保育園で長女が行方不明になったんです。結果だけを言うと、かくれんぼ中に寝ちゃった……ということだったんですが、園内が大騒ぎになって。当然、僕と妻も保育園に向かったんですが、ふたりとも仕事が終わってからだったんです。
今思うと、当時はそれぞれ好き勝手に仕事していて、普段もお迎えの時間が遅かったり、寝かせつけも遅かったりしていました。そういうの姿を見ていた保育園の先生から『いい加減にしなさい。子供のことをちゃんと考えなさい。子供が子供を産んだんじゃないんだから』って叱られたんです」
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