「態度が悪い部下」に困る人に教えたい究極の技 日本人が知らない「モチベーションアップ」法

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同僚の目に呆然とした表情が浮かんだ。自分の勘違いを、即座に悟ったのだろう。件の隊員の態度が悪化したのは当然だ。価値ある経験を積んだ彼のような人物がトイレ掃除の責任者に命じられても、それは、リーダーとしてのチャンスを与えられたというより罰も同然だ。同僚は首を横に振った。

「どうしたらいいか?」

「そのトイレなんたらはすぐに辞めさせろ。『君にはそれよりはるかに高い潜在性があることに気づいた』とか言って、ぜひ登用したいと話すんだ。そしてやつを任務の責任者にする」

「ああ、今週はコンバット・スイマーの総行程訓練がいくつか予定されている。そのひとつをやつに任せてみるよ」

「いいね」私は言った。総行程訓練とは一種の訓練任務だが、最初から最後まですべてを小隊が計画し、実行する。コンバット・スイマーとは、潜水作戦をあらわすのにシールチームが使う言葉だ。たいていは港で潜水をしてターゲットの船まで行き、機雷を設置し、脱出地点まで潜水で戻ってくる。

これを指揮するのは彼にとって大きなチャレンジだが、やつならできるだろうと私はふんだ。同僚の副指揮官も、やらせてみようと同意した。

180度変わった態度

フィードバックが来るまでにさほど時間はかからなかった。数日後、件の隊員は総行程訓練の責任者になった。私は彼がチームのあたりを歩いているのを偶然目にしたが、その顔つきは前とまるで変わっていた。任務への熱意にあふれた決然とした表情だった。

「調子はどうだい?」廊下ですれ違ったとき、私は彼に言った。

「バッチリです」彼は答えた。

その翌日、同僚は私のオフィスに立ち寄り、こう告げた。

「信じられん!」彼はドアを開けてこちらに歩いてくる途中で、もう話し始めた。

「どうした?」

「やつの態度が、180度変わったのさ」彼は言った。

「そいつはよかった」

「それだけじゃない。すばらしい仕事ぶりだよ。まったくびっくりさせられた。作戦全体の立案と実施を監督させた。助けがいろいろ必要だろうと思っていたのだが、どっこい、そんなことはなかった。チーフとおれに少しは質問をしてきたが、ほとんどはやつがひとりでやった。いやはや、驚いたよ。いちばん驚かされたのはやつの態度だがね。変わったのは一時だけじゃないんだ。次の作戦は別のやつに任せたんだが、あいつ、そっちもサポートしてやっている。まったくすごい効果だ。礼を言うよ」

「いやいや。うまくいって良かったよ。良い方法だから、いつでも使ってくれ」

同僚が部屋を出ていくと、私は思いを新たにした。リーダーにとって、他人を教育する最善のツールのひとつはリーダーシップそのものだ。人を責任ある立場に置いたり、リーダーシップをとらせたりすることは、さまざまな点においてその人間を大きく向上させる。そのツールをよりよく理解するほど、あなたはより正確にリーダーシップを道具として用いつつ、それぞれの人が学ぶべきことを教えられるようになる。

ジョッコ・ウィリンク 「ネイビーシールズ」元指揮官

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Jocko Willink

米海軍特殊部隊「ネイビーシールズ」に20年間在籍。昇進を重ね、イラク戦争でもっとも多くの勲章を受けた特殊作戦部隊タスクユニット「ブルーザー」の指揮官になった。退役後も着実に成功の道を歩み続け、リーダーシップおよびマネジメントについての数百万ドル規模のコンサルタント会社「エシュロン・フロント」を共同設立した。

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