「態度が悪い部下」に困る人に教えたい究極の技 日本人が知らない「モチベーションアップ」法

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私はたいそう驚いた。このやり方で事態が好転した例を数多く見てきたからだ。若きシール隊員としてチーム1の訓練部門でインストラクターの一員をつとめていたころ、不真面目な態度の訓練生がいると、われわれはしばしばそいつを訓練任務の責任者にした。責任の重みでほぼいつも、そうした輩は態度を改めた。責任者にすることで少なくとも、そうした人物を正しい方向へ向かわせるべく圧をかけることはできた。

私にもそういう経験があった。最初に所属した小隊で私がついたのは、第一通信兵(プライマリー・ラジオマン)という、経験の浅い新米がつくのは珍しいポジションだった。通信兵は多大な責任のある仕事だ。通信機の準備はもちろん、任務の計画にも通信兵からの詳細なインプットが必要になる。新米には結構な重荷であり、私はプレッシャーを感じていた。

そしてそれが、私を正しい道へと後押しした。私は以前より仕事に熱を入れ、準備も入念にするようになった。だれかの後ろに隠れることができる場合や、年長の通信兵に頼ることができた場合に比べ、はるかに真剣に仕事に取り組むようになった。

その次に配属された小隊で、責任感がもたらす効用はさらに明確になった。私や他の若い隊員は小隊の指揮官から、作戦の計画および運営を委託された。私たちは高揚し、前向きな態度で仕事に臨んだ。大きな責任を与えられたことは、われわれをシール隊員として向上させた。

だから私は、なぜこの戦術がよその小隊で功を奏しなかったのか、理解できなかった。

「本当か? ひどいな」私は言った。

「ああ、本当さ。やつの態度はさらに悪くなった。それも一瞬で。責任者になれと言われたとたんに、やつの態度は前よりさらに悪化した」

より重要な任務を与える

ますますわけがわからなかった。いったいどうして、若くて頭脳明晰でカリスマ性もあり、運動能力にもたけたシール隊員が、リーダーになりたくないのか? 私は首を傾げた。そのときふと、ある考えが浮かんだ。

「ちょっと待った。どんな仕事の責任者にしたんだ、やつを?」私は言った。

「小隊小屋の外にある洗面所の掃除と、ゴミ箱を毎日カラにすることを任せたよ。それならたいして負担ではなかろうし!」彼は答えた。

私は頭を振った。あきらかに、私の言葉が足りなかったのだ。

「なんてこった!」私は言った。自分の説明不足がもとでこんな事態が起きたことに、私は動揺していた。

「そうじゃなくて、もっと重要な任務を与えてやるべきだったんだ。彼をやる気にさせるような重要な任務を。やつの態度が悪化したのは無理もない。トイレ掃除の責任者だって! それはどうしようもない新米に任せるべきであって、たくさんのポテンシャルをもつああいうやつにやらせる仕事ではないだろうよ! おれは、やつを訓練の遠征の責任者にしたらとか、訓練のための作戦を率いらせたらというつもりだったんだ」

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