日本人の"コーヒー偏差値"を変えた、あの一杯 セブンカフェ出現で、1万円コーヒーが売れる?

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日本は世界4位のコーヒー消費国だが、まだ少ない?

コーヒー市場について、よりマクロな視点で見てみよう。日本のコーヒー市場は成長している。全日本コーヒー協会によると、国内のレギュラーコーヒー消費量は1990年から1.5倍になっている。

日本のコーヒー消費量は、世界各国の中でアメリカ・ブラジル・ドイツに次いで世界第4位(全日本コーヒー協会調べ)を誇る。しかし、実はこの数字は世界10位の人口のおかげだ。1人当たりの年間のコーヒー消費量で見ると、日本は世界29位。年間たったの340杯だ(トリップアドバイザー調査)。

コーヒーの戦略については、永井氏の著書『戦略は一杯のコーヒーから学べ!』にも詳しい

一方、1位のルクセンブルグは年間2844杯と、なんと日本人の8倍の量を飲んでいる。ランキング10位の国でも日本の2倍近い年間600杯を飲む。こうして考えてみると、日本のコーヒー市場は、まだまだ伸びる余地があるのだ。

そんな中で出現したセブンカフェは、日本のコーヒー市場に、極めて大きな一石を投じた可能性があるのではないか。

“コーヒー偏差値”を上げた日本の消費者たちは、美味いコーヒーに殺到する一方、不味いコーヒーには見向きもしなくなるだろう。努力しないコーヒー企業の行く末は明らかだ。

「呼び水」としてのコーヒーを使い倒す企業たち

セブン以外にも、他業種でコーヒーが大きな可能性を持っていることに気づき、大きな成果をあげた企業は多い。代表例は日本マクドナルドだ。2008年に発売した「プレミアムローストコーヒー」(100円)は、年間3億杯も売れている。セブンの年間4.5億杯には及ばないものの、これもお化け商品といっていい規模感だ。

そもそもマクドナルドは、新商品としてコーヒーの売上拡大を狙ったわけではない。プレミアムローストに取り組んだのは、意外なことに、ビックマックの売り上げを伸ばすためだったのだ。

ビックマックは成熟したハンバーガー市場において、圧倒的に高いシェアを持つ。この市場は成長が望めないものの、マクドナルドにとっては頼もしい稼ぎ頭だ。そこでマクドナルドは、「ビックマックでどのように稼ぎ続けるか」を戦略的に考えたのである。その答えは、ごくごく簡単な数式で導き出された。

まず、売り上げは「客単価×客数」だ。そして客数は「来店頻度×顧客獲得率」。つまり突き詰めて考えると、来店頻度を上げて、新規顧客を獲得すれば、客数が上がり、売り上げも拡大する。問題は、それをどのように実現するか、だ。

そこでマクドナルドが選んだのが、コーヒーだった。コーヒーは習慣性がある。摂取頻度も高い。しかし当時マクドナルドが店頭で出すコーヒーは、決して美味しいとは言い難かった。改善の余地がとても大きかったのだ。だから、本格的コーヒーを、最もお得感ある価格で提供すれば、来店頻度も上がるし、新規顧客も獲得できるはず、と考えた。シンプルで明確な戦略の目的を設定したのだ。

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