子どもつい正解へと導いてしまう親に欠けた視点 「植え付ける・耕す」子育てとはいったい何か
そして、この点が最も重要なのですが、この畑というのは、他人によって、強制的に「植え付け」られると、そのたびに、どんどん干上がって硬くなり、生きづらさはどんどん増していき、どんな種類の植物も育たなくなってしまうのです。
しかし、世の中の多くの親は、そのようには考えていないと思います。わが子が発する子どもじみた意見をわずらわしく思い、それを無視して、自らが考える正解を、子どもに「植え付け」たくなるのです。
まるで、粘土細工をつくるように、自分の好みに合わせて、子どもという作品をつくろうとし、それによって子どもの見た目は親好みになっていきます。親がそれに満足する一方で、人知れず生きづらさを増していく子どもたちはたくさんいます。
「植え付け」は子どもの心を硬くする
もちろん、「植える」行為が一概にダメなわけではありません。それどころか、実際には「植え付け」が必要な場面はたくさんあります。
例えば、道路を歩いているときは車の前に飛び出さないように、その怖さを植え付けないといけないし、お菓子ばかりを食べていると体を壊してしまうことも、ある程度の学問も、日本の文化や慣習も、植え付ける必要があります。
こういう知識やセンスを植え付けないと、その子が将来的に生きづらくなるのも確かです。ただし、そのときは親として、次の点をつねに意識しておきましょう。
「その子が、今のあなたの年齢になるころ、あなたは何歳になっていて、世の中の環境や、人々のライフスタイルが、どのくらい変化していると思いますか? それでもなお、あなたはそのセンスをわが子に植え付けますか?」
あなたが普段から、この点を明確にイメージし、自覚しておけば、そのつど、「子どもの心の畑が干上がるリスクを冒してでも、そして、私自身の膨大な労力を費やしてでも、この考えを子どもに植え付けるべきかどうか?」という判断がつきやすくなると思います。
とにかく重要なことは、大人から子どもへの「植え付け」は、子どもの心の畑を干上がらせ、硬くしてしまうリスクがあるということです。そして、それらの「植え付け」は、いつでも必要なときに子ども自身でも習得できるし、友達や学校の先生でも、可能だということです。
変化の激しい世の中では、自分という畑に植え付けられる植物は、時代や環境の変化に合わせてコロコロと植え替えることができるようにしておくことのほうが重要で、植え替えるためには、土台となる「心の畑の豊かさ、軟軟性」をつくっておく必要があります。
ここまで、「耕し子育て」が子どもを生きやすくすると説明してきました。ここからは、「耕し子育て」の枠組みとなる「放牧システム」について解説していきます。「放牧システム」とは、文字どおり「放牧」をするように子どもを育てる方法です。
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