「自己愛の低い人」が幸せになるたった1つの方法 子が親に贈る「自分の人生を創る」ライフシフト

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第三者のコミュニティだからこそ、対話できることがあると思うのです。

本書そのものが、著者と読者の対話構造になっているとも言えます。著者からは、具体的なモデルケースが示され、さまざまな問いかけがあり、どれも想像の余地、考える余白が残されています。書かれていることを、自分自身に落とし込んだとき、どうリアクションするのかを考えることができるわけです。

テクノロジーの平等とモチベーション格差

僕自身、本書を受けて、「ありうる自己像」を見直すために、マンダラチャートを作りました。大谷翔平さんが、子どもの頃から何度も作っていたものですが、改めて自分と事業との距離感を整理することができ、本書では紹介されていなかったものの、実践としていいツールではないかと思いました。

ただ、誰もが最初から自分の自己像を描けるのかというと、そうではありません。

私が理事を務める社団法人に、高校生と、社会で活躍する大人との偶発的な出会いをつくる「高校生みらいラボ」というものがあります。そこでは、なかなか未来へのモチベーションを持てずにいる子たちとも出会います。

起業家志望で、僕に直接連絡をくれて、メンタリングをさせてもらっているような子たちの場合、最初から「自分のミッションはこれです」「こんな興味関心があり、これに困っています」と伝えてくれます。

しかし、そうではない子もいます。1カ月、2カ月とプライベートなことを交えて会話し、関係を作る中で、ようやく共通点が見えてきたり、発端となる部分がつかめるかどうかという子のほうが大多数なのです。

その子たちにとっては、本書を読んで、独力で「ありうる自己像」を描いたり、自分の人生のストーリーを考えるといったことは難しいと感じます。

ここには、家庭環境から受けた影響があります。所得格差、幼少期の体験などいろいろありますが、自己肯定感、自己愛着の形成がうまくできていないために、将来の夢を語ることに対して、後ろめたさを感じてしまう場合があるのです。

■なんでもモチベーションのせいにされる怖さ

テクノロジーが進歩し、学び方が変化してもいますが、オンラインの学びのプラットフォームなどは、民主化されればされるほど、実は、環境の整わなかった子たちに対して、鋭利な刃物のような存在になってしまうのではないかと危惧しています。

どんな家庭環境でも、無料で勉強できるようになった――その通りです。しかし、経済格差、家庭環境の格差は、実は子どもたちのモチベーションの格差にも相関しています。「今はどこでも無料で学べる環境があるのに、なぜやらないのか」と言われると、追い詰められてしまうでしょう。

本来であれば、その子自身ではどうすることもできない境遇によって、自己肯定感の高低が定まってしまう。これでは、一歩踏み出す原動力が生まれず、悪循環から抜けられません。

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