「怒りが収まらない人」が気づいてない"裏の感情" その背景にあるのは期待、そして甘え?

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すべてはこの問いからはじまりますが、認知とは表層的感情の自覚はもちろん、それを掘り下げて分解していくことで、奥に隠れている別の感情や自分の価値観を認知するという意味も含まれています。「感情の解像度を上げる」作業なので、簡単なようで実はかなり難しく、僕もいまだ試行錯誤しながら糸口を探っています。

自覚している感情以外にも注目する

まず僕がプルチックの「感情の輪」を利用して認知を行うときは、自覚している感情だけでなく、その両側と対極にある感情にも注目します。基本感情の組み合わせから生まれる混合感情との関係性からもわかるように、ひとつの感情がそれだけでシンプルに成り立っているはずはない、と考えているからです。

たとえば職場の上司から「そんなやり方をしていると成功しないよ」と指摘されたことに「怒り」を感じたのであれば、「怒り」と両隣にある「期待」や「嫌悪」、対極の「恐れ」までも視野に入れて、次のような問いを立ててみます。

・自分は相手に何を「期待」していたのか
・自分は何に対して「嫌悪」しているのか
・自分は何を「恐れて」いるのか

こうした1つひとつの問いに思考を巡らせて仮説を立てていきます。その結果、自分の中に「成功できない人」と評価されることへの「不安」や「恐れ」があり、それが「怒り」へとつながっていたことに気づくかもしれません。

僕の場合、多くは「期待」の影響を受けていて、それが他者の行動によって「怒り」に変わっただけなのだという認識を持つようになりました。これにより、「相手が悪い」や「相手が変わらないと問題は解決しない」という思考停止の状態から、自分自身の問題として考え直せるようになり、思考がほぐれていったのです。

具体的なシーンに置き換えると、イベントの準備をしていて、事前に頼んでおいたものが、当日用意されていなかったとします。そのことを担当者に指摘したものの対応してもらえず、怒りを感じながらも諦めることに……。

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