「バイデンフレーション」がアメリカ民主党を直撃 中間選挙に向けて共和党が勢いに乗っている

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今や物価上昇を抑えるにあたって、政権が実行できることには限界がある。インフレ対策については、物価安定を2大責務の1つとするFRBに依存せざるをえない。

1974年、ジェラルド・フォード元大統領は、「今すぐ、インフレを打倒せよ(WIN: Whip Inflation Now)」の草の根キャンペーンを展開した。フォード大統領はインフレを「国民の最大の敵」と訴え、自動車の走行距離を減らし、暖房の利用を控え、ムダを減らすなど国民に呼びかけたものの、効果は見られなかった。

バイデン大統領は不景気を引き起こさない限り、インフレを抑えることはできないとも一部専門家は指摘する。FRB議長の指名権を保有しているのは大統領であるため、大統領はわずかながら政策の方向性に影響を及ぼすことは可能といえる。だが、中央銀行の独立性維持の観点から、リンドン・ジョンソン元大統領やリチャード・ニクソン元大統領のようにFRBの金利政策に公の場であからさまに口を出すことをバイデン大統領は控えるであろう。

だが、インフレの責任の所在はバイデン政権と国民は見ていることから、バイデン大統領は政治面でも自らの裁量で実施できる対策を打ち出し、国民にアピールすることが重要だ。

難航するビルド・バック・ベター法案

ロサンゼルス港の24時間稼働、アメリカ連邦取引委員会(FTC)による石油・ガス会社の違法な価格引き上げ行為などの監視、石油戦略備蓄(SPR)の放出などを発表したが、いずれもインフレを抑える効果は限定的だ。唯一、わずかながら効果が期待できるのは対中関税などの引き下げだ。しかし、民主党支持基盤である労働組合や鉄鋼業界などへの配慮からもこれは難しく、可能なのは同盟国や友好国に対する関税緩和や撤廃などに限られる。

民主党はソフトインフラとも称される歳出法案(ビルド・バック・ベター法案、Build Back Better、BBB)の早期可決を目指している。共和党は民主党が同法を成立させればインフレをさらに加速させ、国民生活をいっそう苦境に陥れると批判している。これに対し、ブライアン・ディーズ国家経済会議(NEC)委員長をはじめバイデン政権は、BBBはすでに財源を確保しており、サプライチェーン対策が盛り込まれていることで逆に物価上昇を抑えられると反論している。

たしかに10年間にわたる歳出であることからも、BBBによる物価の押し上げは微々たるものかもしれないが、政治的には共和党のシンプルな説明のほうに国民は納得するかもしれない。

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