HOYA、創業家経営者に問われる“負の影響力”の自覚《新しい経営の形》

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 結局、15議案は否決されたが、外国人投資家から4割超の票を集めた提案もあった。「株主は実際の取締役会をチェックすることはできない。会社側の自己規律で社外取締役の質を高めてほしい」とISSジャパンの石田猛行・日本リサーチ代表はくぎを刺す。単純に“社外過半数”でありさえすればいいのかどうか、監督体制を見直す局面に来ている。

第2の問題は、内部の意思決定の仕組みにある。外からの目が届かない中枢部分に、会社の中期的成長を阻みかねない、病巣のようなものが存在するのだ。

メーカーの将来を左右する「研究開発(R&D)」のあり方に、その深刻さが際立つ。現在の稼ぎ頭であるHDD用ガラス基板や半導体製造用部材、眼鏡などは、すべて90年代以前に生まれた事業だ。直近10年間では、新規事業の成功はない。

HOYAの売上高研究開発費比率はここ数年、4%前後を推移。競合他社を見ると、リーマンショックの影響で費用を絞り込んだ前期でさえ、平均10%弱の水準だ。鈴木CEOは「自社研究とM&Aの両面から新規事業を開拓したい」と話す。

技術系の元幹部は、「新規事業創出を目的とするR&Dセンター(本社直轄)の主要人員は20人程度で、その数もここ1年で確実に減っている」と明かす。09年版アニュアルリポートの「研究開発活動」の項には七つの研究が紹介されているが、うち3C−SiC、光通信コネクタは、将来性がないとの判断で収束に向かっている。残りについても、人工水晶体のように担当者が実質1人であったり、米国の大学に任せきりだったりと本腰は入っていない。

近視眼的な研究開発体制 創業家カリスマの重い影

09年6月まで、R&Dセンターには技術開発を統括するCTO(最高技術責任者)がいた。が、担当者が退任した今、ポスト自体が存在しない。

「そもそも、CTOがいたときも、実際には鈴木CEOが采配を振るっていた。幹部の多くは、現場に相応の権限を与えないCEOに問題があると感じているが、面と向かって進言する者はいない」(元幹部)。

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