HOYA、創業家経営者に問われる“負の影響力”の自覚《新しい経営の形》
西武新宿線・下落合駅には各駅停車しか止まらない。駅から3分の場所に、光学ガラスメーカー最大手、HOYAのグローバル本社がある。執行役の執務室は5階。大して広くないうえ、二人部屋だ。
窓に背を向けて鈴木洋CEO(最高経営責任者)、鈴木CEOから見て右の壁沿いに浜田宏COO(最高執行責任者)が座る。二つの机は手を伸ばせば届く距離。調度品のたぐいはなく、入り口に談話スペースがあるだけ。売上高4000億円を超す会社の経営トップの執務室にしては、質素このうえない。
2年前の6月、浜田氏がこの部屋に来るまで、二人は一面識もなかった。元デル日本法人社長の浜田氏をスカウトしたのは社外取締役から成る指名委員会だ。その半年前、HOYAは内視鏡とデジタルカメラのペンタックスを買収。「指名委員会が私一人で指揮するのは無理だと判断したのだろう」と鈴木CEOは言う。
実際、最終的な人事権は社外取締役5人から成る指名委員会にある。年に5回の指名委員会では、鈴木CEOは議場から退出する。「会議室でぽつんと待つ立場。呼ばれなかったら荷物をまとめて出ていけということ」。そう語る表情は真剣だ。
完全な独立採算制 全体見る執行役は4人
HOYAが長年貫いてきたポリシー、それは「おカネへの執着」(鈴木CEO)だ。ROA(総資産利益率)の高さには定評がある(下グラフ)。JPモルガンの森山久史アナリストは、「同業他社と比べて収益性は断トツ。2ケタ未満の営業利益を許さない体質」と評価する。