HOYA、創業家経営者に問われる“負の影響力”の自覚《新しい経営の形》

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小


 事業部制を敷く同社では横のつながりがほとんどなく、完全な独立採算制だ。研究開発費や給与・賞与を含め、すべて事業部内で完結。事業戦略の立案も「各事業部に一任」(鈴木CEO)するため、会社全体を見る経営陣(執行役)は4人しかいない。全社戦略の立案は鈴木CEO、市場分析は浜田COO、ほかに財務、企画と担当区分を分けている。

取締役の過半数が社外 「私のクビを切るのが役割」

特筆すべきは、人事などの最終決定権を持つ取締役会の構成だ。取締役8人中5人が社外の人間。日本IBMやキッコーマン、日産自動車の元経営者らが名を連ねる。委員会設置会社であるため、従来の監査役会の代わりに、取締役が経営陣を監督する。過半を占める社外取締役が団結すれば、CEOの解任も可能だ。

21年前、HOYAには17人もの社内取締役がいたが、創業家の長にモノ申せる部下は皆無だった。95年、鈴木哲夫会長は親交のあった椎名武雄・日本IBM会長(当時)を初の社外取締役として招いた。社内にはびこる創業家の“無言の圧力”を省みての、自己規律だった。

「社外取締役の役割は(いざというとき)私のクビを切ること」。鈴木CEOは言い切る。「自分が正しいと思っても、ほとんどの人には正しくない場合がある。お山の大将はそれがわからない。私のやり方にデメリットが多ければ、『お役ご免』にしてもらわなければならない」。

久保克行・早稲田大学商学研究科教授は、社外取締役の存在を「会社が大失敗をしないための経営者への規律づけ」とする。今年3月に施行された内閣府令でも、より充実した企業統治を目的に社外役員の独立性について企業に説明を求めている。

「社長に対して『NO』と言える人がいるかどうか。社内の部下では難しい。外部の目が加わることで、論理立てて説明できないような経営判断はしづらくなる」(久保教授)。取締役会の監視メカニズムがきちんと機能すれ
ば、合理的な戦略の下、会社は成長を遂げるはずだと言う。

ではHOYAの場合、実際にそうした監視機能が働き、経営の執行に生かされているのだろうか。そこで浮上するのが二つの問題点だ。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事