北海道新幹線で分離「並行在来線」存続への妙手 道とJRには「やる気」が感じられず、廃線ありき

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活動の原動力は並行在来線問題への懸念だったのかもしれないと、中村氏は振り返る。現在は、ホーム直結の日本酒バーも開店し、観光列車の停車による経済効果は絶大だという。「撮り鉄、乗り鉄、果てはスタンプや切符の収集など幅広いファンを持つ鉄道の魅力があるからこそなせる業であり、バスでは同様の効果は得られない」(中村氏)。

日本国内にはライトな層も含めた鉄道ファンは150万~200万人存在し、これは航空機の3~4倍、バスの10倍にものぼる。地域への経済効果の波及を考えると鉄道の観光路線化が集客の面では最も効果的と言える。

後志地方の活性化に必要なことは?

地域経済活性化の側面からの在来線維持の利点については、鉄道存続による交通利便性の維持、鉄道の観光化による地域への経済効果の波及、そしてパブリシティ効果の3点が挙げられる。

函館本線の長万部―小樽間の収支状況についてはコロナ前の2015年から2019年にかけては収入が4.5億円前後に対して費用が27億円前後で推移はしているが、余市―小樽間の区間については、輸送密度が2144人と現状で鉄道として維持ができる水準に達していること、バスの半分程度の所要時間で移動できることなどから、途中駅を増やした高頻度運転によるさらなる利用促進により鉄道として維持する方針が具体化しつつある。

余市町は人口1.8万人を擁し堅実な通勤・通学・観光需要があるほか、新幹線駅が設置される予定の倶知安方面についても、倶知安駅のある倶知安町が1.4万人で世界的に有名なリゾート地である「ニセコ」を控えていること、隣の小沢駅のある共和町は人口6000人程度ではあるが、同地域は14km先にある人口1.1万人の 岩内町を中心とした岩内都市圏を構成しており、倶知安―余市間においても3.1万人程度の人口を擁していることから、地域内における高速交通機関というポテンシャルを発揮できれば収支均衡を目指すことは不可能ではない。

高価格帯の観光列車の運行についても新幹線との相乗効果が十分に見込めることから増収を図るうえでは有効だ。簡易的な試算ではあるが、客単価が3万円程度の観光列車を1列車50席の座席販売目標で年間150日程度1往復運行を行うだけで4.5億円程度の増収が可能となり、土産物販売などによる経済効果も期待できる。

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