北海道新幹線で分離「並行在来線」存続への妙手 道とJRには「やる気」が感じられず、廃線ありき

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北海道新幹線H5系(編集部撮影)

2030年度の北海道新幹線・新函館北斗―札幌間の延伸開業に向けて、JR北海道からの経営分離が確定している並行在来線区間の今後についての議論が北海道新幹線並行在来線対策協議会で続けられている。議論の焦点は新幹線開業に合わせて並行在来線区間となる函館―小樽間の動向だ。

貨物列車の運行がない長万部―小樽間のうちとくに長万部―余市間の区間においては、鉄道の廃止を前提とした議論が進められており、後志(しりべし)地方の小売事業者などからは「新幹線開業を契機に地域経済の活性化を期待したいが、このままでは後志地域を素通りされる結果となりかねない」と落胆の声が漏れ聞こえてくる。

 経済効果の視点が欠落

並行在来線対策協議会で議論されていることの何が問題なのであろうか。それは、並行在来線を含めた地域資源を活用して地域の魅力を高めることにより地域経済の活性化を図ろうとする視点が欠落していることと、新幹線開業後の地域の活性化に向けたワークショップの場がないことの2点だ。

九州新幹線鹿児島ルート開業の際には、新幹線に接続する在来線の観光列車の充実化が図られ、メディアからの注目も大きく集めたことで鉄道自体が魅力的な観光コンテンツとなった。それにより在来線の増収が図られると同時に地域一帯の特産品の消費拡大が図られ、土産品などの販売も伸び、新幹線の開業による地域経済活性化の成功モデルを構築することができた。

しかし、北海道新幹線の並行在来線協議会での協議は、現状の輸送密度と赤字額などに基づき長万部―余市間のバス転換が妥当という結論ありきでの議論を進められているような印象があり、他地域のように新幹線の開業を契機に地域経済をいかに活性化させるのかという視点が欠落している。

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