コロナ禍で「夕食の手作りやめた家庭が急増」の訳 データ分析で見えた食卓の大きな構造変化

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内食率、すなわち「場」や「機会」としての夕食の大きさは、2020年も2021年もほぼ変わりませんでしたが、その中身はどうだったのでしょうか。メニューの「用意の仕方」の視点から見てみたいと思います。

インテージ・キッチンダイアリーでは、各メニューがどのように用意されたかがわかります。例えば、餃子を例に挙げると、具材(餡)から作って皮で包んだ場合を「手作り」、冷凍やチルドの餃子を焼いたりレンジで温めたりした場合を「加工食品利用」、前日残った餃子を温め直した場合を「残り物」、スーパーや外食店でできあいの餃子を持ち帰った場合を「総菜利用」、中華料理店の出前やフードデリバリーサービスを使った場合を「出前・宅配」などといったように区分しています。

ここでは、主食、汁物、おかず(主菜、副菜)の「手作り」「加工食品利用」「総菜利用」にフォーカスして見てみたいと思います。図2に、主食、汁物、おかず(主菜、副菜)の出現回数を、用意の仕方(手作り、加工食品、総菜利用)別に表しました。図1の内食率と同様、2016年を100とした指数で表しています。

2020年は手作りに若干復活の兆し

「手作り」は2019年まで年々減少していたところ、2020年に微増、2021年は減少、「加工食品利用」は右肩上がり、「総菜利用」は2020年に減少も2021年はアップ、というように、それぞれ異なる動きをしていることがわかりました。夕食の内食率については2020年と2021年に大きな差はありませんでしたが、夕食メニューの用意の仕方については大きな構造変化が起きていることが見てとれます。

「手作り」は、夕食で登場する主食、汁物、おかず(主菜、副菜)のうち、7割強を占めており、今も昔も「手作り」が夕食の食事作りのベースになっていることに変わりありません。

ところが近年は、「手作り離れ」や「食の外部化」が進んでいることもよく知られている事実です。少子高齢化や女性の社会進出、共働き世帯の増加など、複数の社会的要因が絡み合い、食事作りに対する時短志向・簡便意識が強まったことが一因と考えられるでしょう。こうした要因が、2017年以降の手作りの減少として表れてきているものと考えられます。

こうした動きの中、2020年は手作りに若干復活の兆しが見られました。コロナ禍で外出できず潤沢な「おうち時間」があったため、せめて家で食事作りを楽しみたいという思いが芽生えたり、いつもより1品多く少し手の込んだものを作ったりする意識が背景にあったのではないでしょうか。

また在宅勤務中の家族や休校中の子どもたちが食事作りを手伝うようなシーンもあったかもしれません。2020年春ごろにはスーパーの店頭で品薄になった商品カテゴリーもいくつかありましたが、これはこうした家庭での手作り需要の高まりに追いついていなかったことが背景にあったものと考えられます。

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