「問題」と「課題」を区別できない人がしがちな失敗 意外と違いがわからず使っている場合もある

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【社員食堂を誰にとっても使いやすい場所へリニューアルするための課題は何か】

A. 今は特に何も配慮していないので、使える人が限られている
 →すべての人が使えるように配慮する
 B. 食堂で社員が歩く動線を改善する
 C. 世の中の多くの企業と比較しても、対応が遅れている
 →最新情報を入手し、他社の事例で良いものを取り入れる
 D. 社員食堂で働く従業員のダイバーシティへの知識を高める

このように、「問題」は理想的な状態に向けて障害となっていることを現状の中から「発掘」するものであり、「課題」はその問題を解決するために実行するべきことを「設定」するものなのです。

これを正しく使い分けることで、最適な解決策(打ち手)を見つけることができるようになるのです。

言葉の定義を明確にすると「思考」が変わる

「問題」と「課題」を使い分けられないまま思考しているようでは、正しい解決策(打ち手)は見出せません。

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言語学の仮説で「サピア=ウォーフの仮説」というものがあります。私たちの思考は、使用する言語によってつくり出されるものであり、逆にいうと使用する言語が思考を限定してしまうという考え方です。思考が先にあって、言語がついてくるのではなく、言語そのものが人の思考や価値観を制限してしまうということです。

だからこそ、「私たちが普段使っている言葉遣いは果たして正確なのか? 問題ないのか?」ということを、丁寧に考えていくことは非常に大事なことだと私は考えています。

ここでは、言葉の違いを指摘したいわけではありません。お伝えしたいのは、適切な解決策(打ち手)を見つけるためには自分の頭の中で「問題」と「課題」を仕分けして整理できているかが一番大切、ということです。そこを使い分けていくことで、自然と「問題」の発見の仕方や、「課題」の設定の仕方が、どんどん良くなります。そして、適切な解決策を見出すことができるようになります。

「課題」と言いながらただの「問題」になっていないかに注意してみてください。ぜひ、「問題」と「課題」を適切に区別しながら最適な解決策を見出し、ご自身の商品やサービスをヒットさせてください。

阿佐見 綾香 電通 戦略プランナー

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あさみあやか / Ayaka Asami

早稲田大学卒業後、電通入社。戦略プランナーとして企業のマーケティング、経営戦略、事業・商品開発、リサーチ、企画に従事。担当業種は化粧品・家庭用品・食品・飲料・レジャー・家電・アプリ等。大手からベンチャー・中小まで、幅広い業種・規模の企業を手掛け、リサーチで見つけたターゲットインサイトをもとにヒットをつくることを得意とする。本業の傍ら、リサーチに苦手意識がある人に寄り添ったセミナー、講演に登壇。電通のマーケティング部門にて、新入社員教育プログラム「マーケティングリサーチ研修」を担当。平均満足度は97% 超。Forbes JAPANコラムニスト、日本経営合理化協会、国際女性ビジネス会議他、講演・寄稿多数。

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