オミクロン株には「追加接種」がはたして正解か 追加接種に前のめりな先進国と途上国の攻防

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オミクロン株の広がりやすさや人体の免疫反応に対する影響はまだはっきりとわかっているわけではない――(写真:Michaela Handrek-Rehle/Bloomberg)

つい最近まで公衆衛生の専門家の多くは、アメリカの全成人を対象に新型コロナウイルスワクチンのブースター(追加)接種を行うというバイデン政権の政策に強く反対していた。大半の人については追加接種の効果を裏付ける科学的証拠がほとんど存在しないという理由からだ。

しかし、そうした状況はオミクロン株で一変した。

オミクロン株の広がりやすさや人体の免疫反応に対する影響はまだはっきりとわかっているわけではない。ただ、変異箇所が約30カ所に上ることを踏まえると、ワクチンの保護効果はかなり下がるとみられる。

追加接種には明らかに抗体価を上昇させ、感染予防効果を引き上げる効果がある。したがって、オミクロン株が変異によって一段と強力なウイルスになっていたとしても、追加接種はその影響を抑えるのに役立つだろう。

次のワクチンができるまでの時間稼ぎ

追加接種に反対していた専門家の多くは今、この新しい変異株に対しては追加接種が最も優れた防御手段になるかもしれないと考えるようになっている。追加接種で感染拡大を遅らせることができれば、少なくともワクチンメーカーがオミクロン株に対応したワクチンを開発するまでの時間を稼ぐことができるかもしれない。もちろん、これは新たなワクチンが必要になった場合の話だが。

「免疫を回避する可能性がある以上、追加接種はしないよりはしたほうがいいだろう」。全成人を対象としたバイデン政権の追加接種にこれまで反対してきたベルビュー病院センターの感染症専門家セリーヌ・ガウンダー氏はそう語る。

アメリカ政府は科学的な合意形成を待つことなく対策に動き出している。オミクロン株に関する暫定的な報告に警戒感を高めたアメリカ疾病対策センター(CDC)は11月29日、全成人が追加接種を受けるべきだとする声明を出した。

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