永守重信「高学歴と仕事の良しあしは全然関係ない」 日本電産創業者が大学運営に本気で取り組む意図

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永守重信(ながもり・しげのぶ)/日本電産会長 創業者、京都先端科学大学理事長。1944年京都生まれ。職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)電気科卒業。73年、28歳で従業員3名の日本電産株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。80年代から国内外で積極的なM&A戦略を展開し、精密小型から超大型までのあらゆるモーターとその周辺機器を網羅する「世界No.1のモーターメーカー」に育て上げた。代表取締役会長兼社長(CEO)、代表取締役会長(CEO)を経て、2021年より代表取締役会長。2014年、公益財団法人永守財団を設立、理事長に就任。また18年には京都先端科学大学を運営する学校法人永守学園理事長に就任(撮影:ヒラオカスタジオ)

――何を重視した教育が必要だとお考えですか。

私は京都先端科学大学で人間としての総合的な知性と感性の豊かさを示すEQ(感情指数)を高める教育を目指している。IQ(知能指数)は生まれ持ったもので簡単にあがらないし、高い人と低い人の差はせいぜい5倍ぐらいしかない。EQは頑張ればあがるし、100倍の差が生まれると思う。EQが高い人は仕事ができるし、顧客にも好かれる。貢献できる仕事をして、社会生活も安定している。

今の教育は世の中で必要な礼儀作法などを全部教えない。大学でも体育や音楽の講義はやめているところが多い。京都先端科学大学では体育の講義を復活させている。基本になる人間づくりや最低限の礼儀作法やマナーが社会に出たときに必要だ。全部自分中心で、たとえば目の前で人が倒れていても知らぬ顔して通り過ぎる人もいる。

心や人間力は勉強以外のことをやらないと身につかない。だから、私は偏差値とブランド主義に反対し、今の大学教育は間違っていると主張している。偏差値の高いブランド大学を卒業したからといっても、それだけでは製品開発はできない。

「とんがり人材」を求める意味

――京都先端科学大学では、本当にこの大学、学部でこれを学びたいと思う学生を受け入れるためにどのような手法を?

型にはまらない「とんがり人材」を求めている。例えば一般的に国立大学に入ろうとおもうと、5教科全部できないといけない。東京芸術大学に入るにも社会または理科ができていないと入れない。それはおかしいと思う。

やはり絵を描きたい、楽器をやりたい、そういう強い思いをもった人を選抜して教育するのがいいのではないか。そこからとんでもない天才が出てくる。東京芸術大学には落ちたけど、ほかの大学に行って、ものすごい音楽家になるケースもある。

京都先端科学大学ではちょっと変わっていて、でも自分の進むべき道がはっきりしていて、何をやりたいか明確なそういう人たちを一生懸命集めている。勉強だけではない。だから、面接も行ってちゃんと学生を選抜する。

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