永守重信「高学歴と仕事の良しあしは全然関係ない」 日本電産創業者が大学運営に本気で取り組む意図
――大学の体制にも特徴がありますか。
学生のことを真剣に考える先生を集めている。「教育」(きょういく)は「教」(おし)えるだけじゃなくて、「育」(そだ)てることも必要だが、今の先生は「教」(おし)えるだけだ。学生が寝ていようが、私語しようが関係ない。そうではなく、寝ていたら起こし、私語していたら注意するなどちゃんとやる。
重視しているのはグローバルな人間を育成したいということだ。日本は小さい国だから、グローバルに活躍できる人をつくりたい。日本電産でも一般的に高学歴とよばれる大学出身者を採用しているが、英語を話せるようになるまで入社後5年くらいかかる。これでは海外に行けない。したがって、京都先端科学大学では英語教育にものすごく注力している。卒業時にTOEIC650点以上を求めるが、それは運転免許みたいなものだ。
勉強ができて医師になったとしても
――京都先端科学大学には附属中学校と高校があります。
求めている人材を育てるには大学4年だけでは足りない。小学校まで必要とは思っていないが、やはり中学、高校からが大事だ。一流大学を出たが社会や職場で順応できない人がいる。受験の勉強で先生に教えてもらったとおりに勉強して自分で考えたことがないからだ。
中学や高校から美術や体育などもやって、同級生との関係をつくる、そういうことから始めていく。つい先日も高校2年生を前にして世の中の変化を踏まえて話をした。附属高校になったわけだし、優秀な生徒が京都先端科学大学に来てほしい。京都大学を目指すとかそんなことに意味はないと私は言っている。日本電産はあらゆる大学から社員を採用しているが、出身大学と仕事ができることは全然関係ない。
例えば、よく勉強ができる人は医師になろうとするケースが多い。そして勉強ができて試験を通過すれば医者になれる。ただ、患者の前に座ったときにいちばん大事なことはコミュニケーション能力だ。ところが、コミュニケーションができない人は、何も話をしないで、結局全検査に頼って、早く薬を出すという感じになる。昔の医師はまず話をすることから始めて、「どうされましたか、心配いりませんよ」「ちゃんと治りますから」と心のケアから始めていた。