ZARAトップ、好調なのに「突然退任発表」のなぜ 急成長の立役者イスラ氏と創業会長が退任へ

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それにしても、イスラ氏はなぜ突然退任を発表したのか。12月1日付の「OKディアリオ」は、創業者の妻となったフロラ・ペレス・マルコテ氏の存在が影響していると見ており、これについては11月30日付の電子紙「イスパニダー」や12月1日付「エル・コンフィデンシアル」も触れている。

こうしたメディアによると、これまでイスラ氏が創業者からの信頼を基に経営トップとして周囲からの干渉を受けずインディテックスを引っ張ってきたが、その姿勢に創業者の妻であるマルコテ氏らが最近になって疑問を投げかけるようになっていたという。

例えば、イスラ氏は会社のマージンを維持すべく販売サイクルをスピードアップさせて、消費者が誰でも簡単に買えるようにネット販売などを推進してきた。結果、市場が拡大して、一定のマージンを確保できるようになった。つまり、攻めの経営を進めてきたわけだ。

妻側の経営方針は?

一方のマルコテ氏らは、インディテックスの市場シェア維持を重視する受け身の姿勢を主張。そのためにはマージンを犠牲にしてもいいのでないか、という意見だというのだ。そのためには例えば、宣伝費も必要となるということなのであろう。

これまでインディテックスは宣伝費が非常に少ないことで知られている。同社はどちらかというと、各都市のメイン通りに店舗をオープンし、消費者の口コミが広がることを販促の基本としてきた。

この水面下での見解の違いによる戦いが最近顕著になっていたようだが、イスラ氏にはこの16年間でインディテックスを世界トップの企業に育て上げた実績がある。創業者の家族との今後の対立を避ける意味でも、今が退任するちょうどいい頃合いではないかと考えたのではなかろうか。それが今回の突然の辞表提出につながったのではないか、と筆者は推察する。

国家弁護士の資格を持つイスラ氏は、銀行の法務部門で勤めた後、スペインを代表するたばこ企業アルタディス社の社長に就任。その時にヘッドハンティングされ、2005年にインディテックスに入社、2011年にCEOに就任した。

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